第四章 雨の想い編
第二話 桜女帝の意地
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「いつもいつも、私の心を見透かしたように言葉をかけてきて、私は耐えられなかった。 悔しい半面、嬉しくて。 だから、もうこの気持ちを抑えられないんです。 私は、あなたが好きです」
「静香さん‥‥‥」
静香の顔は、これまでにないくらい紅かった。
瞳は今にも泣き出しそうなほどに雫が溜まっており、全身は震える。
きっと、この好きと言う言葉を伝えるためにありえない程の勇気と覚悟を使ったのだろう。
そんな彼女に翔は、答えを出さなければいけない。
「俺は‥‥‥」
静香のことは、当然好きだった。
だけどそれは、ホントに恋愛関係としての好きなのだろうか?
尊敬する先輩に対しての好意なのか‥‥‥それとも――――――。
「‥‥‥ッ」
その時、翔の脳裏に過ぎったのは、この質問に対する答えだった。
今まで、この瞬間まで気づくことのなかった‥‥‥大切な答え。
「俺は‥‥‥」
そして翔はその答えを言った。
これで、彼女が傷つくだろうと理解しておきながらも、逃げずに言った。
「すみません。 他に、好きな人がいます。 静香さんよりも、大切な人がいます」
脳裏を過ぎったのは、黒い髪を靡かせ、凛とした美しさを持った一人の女性。
静香ではなかった。
だけど、静香のことは嫌いじゃない。
ただそれが恋愛感情ではないのだと気づいたのだ。
本当に翔が好きなのは、静香ではない。
‥‥‥そう気づいた翔は、今すぐにこの気持ちを本人に伝えたい欲求に駆られた。
「静香さん、ごめんなさい。 俺、今すぐ会わなきゃいけない人がいるんです」
「‥‥‥そうですか」
静香は、そっと微笑んだ。
最後の‥‥‥フラレた女帝の、意地だった。
泣いているところは見せない、それが彼女の意地だった。
「行ってください。 私は、大丈夫です」
「‥‥‥はい。 失礼します!」
そう言って翔は生徒会室を飛び出した。
力強く走り去る翔を見送ると、静香は堪えきれず、本日二度目の涙を流した。
だが、辛さと共にどこかスッキリとしたものがあった。
もう、この気持ちに縛られることはないのだとほっとしたからだろう。
「ぐすっ‥‥‥ぅぅ‥‥‥っ」
今までの中で、一番大量の涙を零した。
感じたことのない胸の締め付けが襲い、苦しみが彼女を包む。
だけど、この気持ちを、この痛みを忘れてはいけない。
この痛みは、相良翔も感じているのだから。
自分だけの痛みではない。
こんなにも強く、たった一人を望んだことなんてなかった。
だけど、これが好きということ。
そし
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