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魔法使いの知らないソラ
第四章 雨の想い編
第二話 桜女帝の意地
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すか?」

「ま、まぁ‥‥‥そうなんですけど」

「けど?」

「‥‥‥すみません」


言葉が続かない翔は素直に謝ると、静香は少し怒ったような表情で翔に言った。


「誰になら相談できるんですか? 私、あなたの先輩なんですよ? 魔法使いの中でも、学園でも、私は皆さんより年上なんですよ? そんな私でも、頼りになりませんか?」

「し、静香さん!?」


急に詰め寄ってきた静香に、翔は驚きのあまり、どきっとしてしまう。

だがすぐに静香も冷静を取り戻し、羞恥のあまり即座に翔から離れる。


「‥‥‥」

「‥‥‥」


なんとも言えない空気が広がる。

しばらくの静寂の間、静香は自分の想いを解き放ってしまいそうで苦しかった。

彼を相手にしてしまうと、つい感情が高ぶってしまう。

いつもの自分ではなくなってしまう。

そして今も‥‥‥この想いを伝えてしまいそうだった。

心臓は今までにないくらいに弾み、呼吸も僅かに乱れる。

体温が急激に上昇していき、軽く目眩がする。


「‥‥‥静香さん」

「は、はい!?」

「‥‥‥大丈夫ですか?」

「は、はい。 大丈夫です。 それよりも、なんですか?」


不意に声をかけられたために、高い声が出てしまった。

取り敢えず落ち着いた静香を確認すると翔は真剣な表情で言った。


「俺は静香さんのこと、とても尊敬してます。 憧れてますし、心から慕ってます。 きっとそれは俺だけじゃない、この学園のみんながそう思ってます。 だから皆はあなたに頼ります。 だけど、俺は逆に、あなたに頼ってもらいたい。 あなたは俺からみたら、心配で仕方ないんです」

「‥‥‥また、そうやって」

「え?」


そして、静香の心はもう限界に達していた。

今まで耐え続けていた想いを、この場で解き放ってしまった。


「そうやって、また何度も‥‥‥私を惚れさせるんですね」

「え‥‥‥え‥‥‥」


今、この人はなんて言った?

翔の中で何度もリプレイされる。

何が起こったのか、さっぱり理解できない。

今の一言はそれだけの威力があったのだ。


「だから、私はあなたのことが、好きなんです。 前からずっと、あなたが私のことを思ってくれることが嬉しくて、だから次第に惚れてしまいました」

「そんな‥‥‥」


翔にとっての高嶺の花、されど触れてはいけない高貴な花。

そんな存在が、自分の好意を向けている。

そのことはとても嬉しかった。

嬉しい半面、疑ってしまう。

なぜこんな自分なのか?

静香を思う人なんて沢山いて、翔は決して特別ではないと思っていた。

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