暁 〜小説投稿サイト〜
魔法使いの知らないソラ
第四章 雨の想い編
第二話 桜女帝の意地
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頃の翔は、迷いだらけだった。

この先、どう生きていくのか、将来はどの道に進むのか‥‥‥。

迷いの中でこの町に来た。

そんな日に、翔は井上静香と言う女性に出会った。

彼女は翔の中でとても輝いている人だった。

誰よりも優しく、誰よしも厳しく、誰よりも誠実で、誰よりも謙虚で、誰よりも努力家で、誰よりも将来のために必死で、誰よりも意地っ張りで‥‥‥

そんな彼女は、いつしか翔の目指すべき存在、目標になっていた。

‥‥‥だが、ある日からその考えに変化が生じた。

それは、護河奈々との再会と過去との和解だった。

相良翔は護河奈々と再会することで、自分の過去を改めて再確認した。

自分がどれほど無謀で、危険な生き方をしていたのか。

そして自分はどれだけ弱く、愚かだったのかを。

それらを理解していくうちに、周囲の人々の捉え方が変わった。

井上静香‥‥‥彼女は当初、目標である存在だった。

だが現在、彼女は翔にとっては心配な存在になっていた。

誰よりも必死に努力する人は、それだけ自分を追い詰めなければいけない。

そしてそれは、自分自身を崩壊させる可能性が生まれてしまう。

事実、翔は過去に失敗をした。

自分のため、家族のためと思って我武者羅に努力をして、そして失敗した。

この灯火町にいる原因だって、自分の失敗があってのことだ。

そんな失敗さえなければこんなに傷つくことも、傷つけることもなかったのだ。

今の井上静香は、その頃の翔と似てるのだ。

そして下手をすれば、同じ道を歩むことになる。

翔は気づくと、自分と静香を重ねてみていた。

だからこそ、心配にもなるし、支えてあげたいと思ってしまう。


「‥‥‥でも、俺もあんまり人には相談してないけどな」


自嘲的な笑みを零しながらそう呟くと、眠っていたはずの静香の口が動き出した。


「‥‥‥ほんと、ですよ」

「すみません。 起こしちゃいましたか?」


そう聞くと静香はゆっくりと上半身を起こし、正座の姿勢になって答える。


「いえいえ。 それよりも、お恥ずかしいところをお見せしましたね。 おまけにブレザーまで」

「いえ、奈々に‥‥‥妹に、よくやってたことですから」


そう言って翔は静香からブレザーを返してもらうと、再び着なおすとはにかんで言った。


「可愛かったですよ。 静香さんの寝顔」

「っ‥‥‥そ、そんなことは‥‥‥」


頬を赤らめ、ゴニョゴニョと口籠る静香だが、すぐにいつもの凛とした表情になると翔に言った。


「それよりも、あなたには割れたくなかったですね。 あなただって、私達には何も相談してはくれないじゃないで
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