第四章 雨の想い編
第二話 桜女帝の意地
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ッ!?」
それは、核心に迫る質問だった。
なんの前置きもなく、茶番もなく、文字通り単刀直入の質問だった。
当然、ルチアは一瞬にして顔を紅潮させて春人をありえないものを見ているかのような、驚愕した目で見る。
口をパクパクさせているところを見ると、どうやら混乱しているようだ。
だが、春人は止まらなかった。
「お前たちを見ていると、焦れったいんだよ。 いつまでたっても気づかない、気づかないくせに嫉妬してすれ違って、喧嘩してさ。 そんなお前たちのせいで、誰かが傷ついてるってことに‥‥‥いい加減気づけよ!」
「ッ!?」
春人の言葉は、怒りが混じっていた。
そのせいで声は高ぶり、威圧感のあるものだった。
ルチアは気圧され、怯えながら返事をするしかなかった。
「それは‥‥‥その‥‥‥」
「気づかないわけないだろ? 悪いけど、俺たちはとっくにお前の気持ちには気づいてた。 今まで言わなかったのは、紗智の意思だ」
「紗智の?」
「‥‥‥いい加減、自分の想いに素直になれよ」
そう言うと春人は軽くため息をついて落ち着かせる。
短い間、終わるとゆっくりとルチアが答えた。
「‥‥‥出来るわけ、ないじゃない!」
「なんで‥‥‥」
次に本音をこぼしたのは、ルチアだった。
利き手である左手で胸を締め付け、痛烈なまでの想いをぶつけた。
「彼は、ずっと一人で耐えて生きてきた! 一人でなんでもできるように頑張ってきた、苦しんできた! ここに来る前から、何度も苦しんできた。 ここに来てからも、何度も傷ついた! それなのに彼は私達を守ってくれた、助けてくれた! そんな彼に、私は何もできない! 想いを伝えられないのよ!」
「ルチア‥‥‥」
ルチアは恐らく、春人達の中で一番よく相良翔を知っている。
彼の過去も、過去の苦しみも、彼の絶望も、彼の痛みも‥‥‥。
知ってしまっているからこそ、その距離の遠さ、その壁の厚さがはっきりと見えてしまう。
そして感じてしまう、彼と自分の間にある様々な過去や葛藤。
全てを理解すればするほど、彼が離れていく。
「私のこの想いは、嘘でなきゃダメなのよ。 だってこの想いを伝えたら、彼がの今までを壊してしまうかもしれない、無駄にしてしまうかもしれない! だったら私は‥‥‥私は‥‥‥」
「‥‥‥分かった」
春人は無言で頷いた。
全てを理解したわけではない、全てを納得したわけではない。
だけど、ここで話すべきことはここまでだろう。
春人自身が聞くべきことは十分聞いたのだ。
残りを聞くべき相手は、春人ではない。
「じゃぁ俺は帰る。 聞
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