暁 〜小説投稿サイト〜
魔法使いの知らないソラ
第四章 雨の想い編
第二話 桜女帝の意地
[4/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
にそこにいた。

その待ち人が来るまでの間、春人は武と紗智のことを考えていた。

なぜ二人が風邪で休んだのか?

それは間違いなく、昨日降った雨に打たれたからだ。

だが武は傘を持ち歩いていた‥‥‥ならば濡れるわけがない。

だけど彼は風邪をひいた。

何故と考えていると、昨日の紗智の態度‥‥‥そこに思い当たる節があった。

――――――紗智は昨日、どこか辛い表情をしていた。

翔とルチアを見て、そして話題に出すと、とても辛そうな表情をした。

何故かなんて、そんなの幼馴染であるからこそ察することができた。

彼女は‥‥‥七瀬紗智は、相良翔のことが好きだったのだ。

そしてルチアと翔の関係を見て、自分には到底及ばないのだと言う現実を叩きつけられて、泣いていたのだろう。

昨日、二人が雨に打たれたのは恐らく、どこかで泣いてる紗智のもとに武が来て、共に雨に打たれてしまったのだろう。


「‥‥‥出来れば紗智には、幸せになって欲しかったけどな」


紗智は、どこか人を避けるくせがあった。

人とは無意識に距離を置いてしまう。

そのくせに、寂しがり屋で一人でいることを嫌がってしまう。

そんな困った人だった。

だが紗智は、相良翔に対しては自分の想いのために全力だった。

不器用な彼女だけど、不器用なりに必死に頑張っていた。

そんな彼女を武と春人は心から応援していた。

‥‥‥それでも、彼女の想いが翔に届くことはなかった。

なのに、紗智は優しかった。

諦めたからこそ、まだその想いに気づいていない翔とルチアに言葉をかけた。

諦めた者だからこそ、挫折を味わい、敗北を味わった者だからこその言葉をかけた。

紗智の、最後の想い‥‥‥それは、翔とルチアが本当の気持ちに気づいてくれること。


「そうだよな、紗智」


きっと今もまだ、涙を流している紗智に向けて、春人はそう聞いた。

誰も答えてくれない。

けれどそれは、届いている気がした。

そんなことを思っていると、屋上の扉が開く音が聞こえた。

待ち人が来たのだ。


「いきなり呼んで悪かったな」

「いえ、特に用事はなかったから別に構わないわ。 それで、用件って?」


透き通った女性の声が春人の耳を貫く。

黒く綺麗な髪を靡かせ、ながらこちらに歩み寄るのは、今まさに考えていた人。

待ち人の正体は、ルチア=ダルクだった。


「単刀直入に、聞きたいことがあるんだ」

「なに?」


春人はすっと息を吸うと、吐き出すと同時にはっきりとした声で言った。


「ルチアは翔のこと、――――――好きなんじゃないのか?」

「え――――――
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ