第四章 雨の想い編
第二話 桜女帝の意地
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にそこにいた。
その待ち人が来るまでの間、春人は武と紗智のことを考えていた。
なぜ二人が風邪で休んだのか?
それは間違いなく、昨日降った雨に打たれたからだ。
だが武は傘を持ち歩いていた‥‥‥ならば濡れるわけがない。
だけど彼は風邪をひいた。
何故と考えていると、昨日の紗智の態度‥‥‥そこに思い当たる節があった。
――――――紗智は昨日、どこか辛い表情をしていた。
翔とルチアを見て、そして話題に出すと、とても辛そうな表情をした。
何故かなんて、そんなの幼馴染であるからこそ察することができた。
彼女は‥‥‥七瀬紗智は、相良翔のことが好きだったのだ。
そしてルチアと翔の関係を見て、自分には到底及ばないのだと言う現実を叩きつけられて、泣いていたのだろう。
昨日、二人が雨に打たれたのは恐らく、どこかで泣いてる紗智のもとに武が来て、共に雨に打たれてしまったのだろう。
「‥‥‥出来れば紗智には、幸せになって欲しかったけどな」
紗智は、どこか人を避けるくせがあった。
人とは無意識に距離を置いてしまう。
そのくせに、寂しがり屋で一人でいることを嫌がってしまう。
そんな困った人だった。
だが紗智は、相良翔に対しては自分の想いのために全力だった。
不器用な彼女だけど、不器用なりに必死に頑張っていた。
そんな彼女を武と春人は心から応援していた。
‥‥‥それでも、彼女の想いが翔に届くことはなかった。
なのに、紗智は優しかった。
諦めたからこそ、まだその想いに気づいていない翔とルチアに言葉をかけた。
諦めた者だからこそ、挫折を味わい、敗北を味わった者だからこその言葉をかけた。
紗智の、最後の想い‥‥‥それは、翔とルチアが本当の気持ちに気づいてくれること。
「そうだよな、紗智」
きっと今もまだ、涙を流している紗智に向けて、春人はそう聞いた。
誰も答えてくれない。
けれどそれは、届いている気がした。
そんなことを思っていると、屋上の扉が開く音が聞こえた。
待ち人が来たのだ。
「いきなり呼んで悪かったな」
「いえ、特に用事はなかったから別に構わないわ。 それで、用件って?」
透き通った女性の声が春人の耳を貫く。
黒く綺麗な髪を靡かせ、ながらこちらに歩み寄るのは、今まさに考えていた人。
待ち人の正体は、ルチア=ダルクだった。
「単刀直入に、聞きたいことがあるんだ」
「なに?」
春人はすっと息を吸うと、吐き出すと同時にはっきりとした声で言った。
「ルチアは翔のこと、――――――好きなんじゃないのか?」
「え――――――
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