第四章 雨の想い編
第二話 桜女帝の意地
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があった。
だから生徒会の仕事を手伝うと言うことは、わずかでも気晴らしになった。
「また何かあったら呼んでください。 いつでも力になります」
「はい。 ありがとうございます」
翔はそう言うと、春人が先に生徒会室のドアを開けて廊下にでる。
彼は今日、日直を担当しているため、次の授業の用意があるらしい。
そして生徒会室は翔と静香だけの空間となった。
「翔さん。 放課後、お話しがあるので出来ればここに来ていただきたいんですがよろしいですか?」
「あ‥‥‥はい」
静香の瞳を見て、翔はすぐにその話しの内容がとても重要な内容であると悟った。
翔の予想としては当然、魔法使いに関すること。
今この場で全てを明かさないのは静香のよくすることで、その理由は学業に気持ちがいかない可能性があるからだ。
だがそれでは、普段から魔法使いの情報を聴く静香は凄い人だと思わずにはいられない。
成績トップ、生徒会長、そして魔法使い。
この三つを両立できる彼女は、本当に凄い。
‥‥‥だが、その分の責務への疲れがあるだろう。
翔も過去に我武者羅と言える程に忙しい日々を過ごしていたからこそ、静香の気持ちがわかるのだ。
痛みに耐えるしかない日々は、とても辛かった。
だけど自分の立場を考えたらそんなことは言ってられなくて、ただひたすらに耐えるしかなかった。
そんな自分と静香は、よく似ている。
「‥‥‥お疲れ様です」
「え?」
「それじゃ俺はこれで失礼します。 このあとも頑張ってください、“静香さん”」
そう言い残して、翔は静香に一礼して生徒会室をあとにした。
その後ろ姿を見つめる静香は一人、左胸‥‥‥心臓の方をギュッと握り締める。
「‥‥‥なんで」
静香は誰もいない生徒会室で、心に秘めたその本音を零す。
暖房で暖まっているはずの空間で彼女は一人、まるで極寒の世界にいるかのように震えていた。
そして声はか細くなり、この学園で‥‥‥いや、この世界で誰も知らないであろう、彼女の弱々しい心の本音が僅かに溢れる。
「なん、で‥‥‥なんで、あなたは‥‥‥いつもそうやって‥‥‥っ」
そこから先の言葉は出なかった。
そして言葉の変わりに涙が流れ、その場でガクッと膝をついた。
両手で顔を隠すように抑え、誰にも聞こえないように声を押し殺して泣いた。
誰も知らない、誰にも見せない‥‥‥女帝の涙だった――――――。
***
《PM16:20》
放課後、桜乃春人は一人、夕焼けに染まる学園の屋上にいた。
たった一人、誰かを待つため
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