第三章 兄弟の真実編
第四話 兄妹・護り、護られる存在
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更に朝我零の持つ武器は、ただの刀ではない。
魔力を秘めた特殊な刀‥‥‥妖刀の類に近いものである。
刀の重量は一般的な真剣の倍近くある。
いくら魔力で強化された肉体であろうとも、それを二刀流で使いこなすほどまではできないはずだ。
それを可能とするのは恐らく、朝我零の持つ天性の才能である。
「翔、先に行かせてもらう!」
そう言うと朝我はダンッ!と強く踏み込むとジェット機のように防風を上げて冷羅魏に迫る。
「うおっ!?」
驚きの声を上げる冷羅魏はとっさに両手に魔力を集中させて氷を発現させる。
氷は魔力によって形状を変化させ、細身の小太刀のように変化した。
「はぁっ!!」
朝我は目にも止まらぬ速度で刀を振るい始める。
速度は次第に上昇していき、地面はいなされた斬撃の痕が深く、数多く存在した。
紅と蒼、二つの光が軌跡をいくつも作り出し、その激しいぶつかり合いを物語っている。
いなし続ける冷羅魏にも遂に限界が来て朝我の一閃が冷羅魏の体を切り裂く。
「がっ‥‥‥ッ!?」
切り裂かれた冷羅魏はそのまま地面に倒れる。
「‥‥‥」
倒れたことを確認すると朝我は刀を鞘に収めて大きく息を吐く。
ヴァンもまたほっと一息つく。
「‥‥‥」
だが、翔は一人、まだどこか納得していなかった。
言葉にできないほどの胸騒ぎ、なぜそれがあるのかは分からないが、その正体は早く知りたい。
翔は念の為に遠くでこちらを見ているであろう皇海涼香に電話をするためにスマートフォンを取り出して涼香にかける。
『弟君!』
「姉さん? どうかしたのか?」
涼香の声は慌てているように息が荒かった。
こちらとは正反対の空気に翔は違和感しかなかった。
『そこにいる冷羅魏は偽物! 本物は、――――――ルチアを狙ってる!』
「な‥‥‥くっそ!!」
刹那、翔は通話を切り、炎の性質を持つ魔力を雷へ変化させる。
そして閃光の如く速度で走り去る。
「おい、翔!!」
置いていかれる朝我とヴァンは倒れる冷羅魏に目をやる。
すると、倒れていたはずの冷羅魏はまるで氷が溶けるかのようにすぅっと消えていった。
「ッ!? まさか、|偽物!?」
「‥‥‥先輩」
その光景を見て、なぜ相良翔があれほどまでに必死に走り去っていったのかが分かった。
相良翔が急いだ理由‥‥‥それは間違いなく、狙われているのが彼にとって大切な人であるうということ。
なぜ狙われているのか‥‥‥そんな理由は後でいい。
今はただ、その人のところに誰より
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