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魔法使いの知らないソラ
第三章 兄弟の真実編
第二話 兄妹・友情と決意
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‥奈々が言った。


「奈々‥‥‥悪いけど、俺はまだ、まだここにいたい。 こいつらと、この町で、色んな思い出を作っていきたい。 だから‥‥‥まだ俺は帰ることはできない」


気づけばこの灯火町は翔にとって、とても価値のある場所になっていた。

当初、この灯火町は相良翔が護河翔になるために来た場所だった。

自分と同じ年代の学生が多く生活する学生の町で、色んな人と接することで今度こそ人を信じることを学ぼうと思っていた。

だから転校初日に出会った時の武たちもまた、翔の中では自分を変えるために利用する存在でしかなかった。

だが、魔法使いとして命を賭け、様々な事情を抱える人と出会うことで翔にとっての彼らの存在の意味は大きく変わった。

武のように、馬鹿で大雑把で元気な熱血野郎。

春人のように、熱血野郎を抑える人。

紗智のように、そんな二人を影で支えて見つめる人。

この三人の存在は翔にとって、大切な日常となっていた。

そして同じように、命懸けで戦ってくれる仲間であるルチア=ダルクや井上静香、それだけでない、この町の魔法使いたち。

彼らとの出会いで、様々な絆を生み出した。

その絆を知るうちに、彼らと過ごす日々があまりにも大切なものになっていた。

だからこそ、翔は彼らを守りたいと思った。

大切な日常を、大切な人を守りたい‥‥‥そう思い、頑張ってきた。

今はまだ、その途中なのだ。

だからこそ、こんなところで全てを投げ出して帰るわけにはいかなかった。


「‥‥‥やっぱり、そう言うと思った」

「え‥‥‥?」


それは、驚きの返事だった。

甘えん坊の彼女が、翔の拒否を受け入れ‥‥‥それだけではなく、分かっていたと言った。

微笑みながら、ゆっくりと頷いた奈々はここに来るときに持ってきていた茶色のアタッシュケースを開ける。

その中にあったのは、大量の衣服だった。

まるで旅行に来ているか、どこかに泊まるかのように‥‥‥


「だから、お兄ちゃんが帰る日まで、私もこの町で過ごします!」

「――――――は!?」


一瞬、世界が静止した気がした。

この少女の言葉は、翔を動揺させるには十分過ぎる破壊力を持っていたのだ。


「な、な、なな、なんでそういう事になるんだ!?」

「だってお兄ちゃんがいなくて寂しいんだもん! 一緒にいたいんだもん! お父さんとお母さんには許可も貰ってるし、灯火学園に来年度は入学するから良いの!」

「なんと!?」


翔の預かり知らぬところで、話しはかなり飛躍していた。

もしや、翔の家がここまで広いのは最初からそうなることを予知していたのではないだろうかと推理してしまう。

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