第三章 兄弟の真実編
第二話 兄妹・友情と決意
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死んでいるかのように冷え切ったその手を温めながら、奈々は言った。
「私もお父さんもお母さんも、お兄ちゃんを待ってる。 あの日のことはなかったことにはできないけど、私たちはやり直したい。 お兄ちゃんに帰ってきて欲しい‥‥‥お願い」
「奈々‥‥‥」
力強く握り締められた翔の左手は、徐々に温もりを取り戻していった。
伝わってくる、義妹の温もりと想い。
二ヶ月、たった二ヶ月だけしか会っていなかったにも関わらず、たったそれだけの期間で、奈々は大きく変化していた。
大きくなり、強くなった。
「強いな。 俺はまだ、あの日のことが夢に出て、その度に涙が止まらない。 弱いんだ俺は‥‥‥奈々のこと、守ってあげられないダメダメな兄さんだよ」
「そんなことない‥‥‥そんなことないよ」
奈々は優しく微笑むと、翔の瞳を覗き込むように見つめながら言った。
「お兄ちゃんは、私の自慢のお兄ちゃんだよ。 我侭で甘ん坊の私なんかに、お兄ちゃんはいつも優しくしてくれた。 今ここにいるみんなだって、お兄ちゃんのことが大切で優しい人だから全てを聞こうって決意したんだと思う」
奈々の言葉に、この部屋にいる翔の友達が全員力強く、笑顔で頷いた。
「お前にどんな過去があっても、俺たちは別に気にしねぇよ。 そんなことでお前を嫌ったりしねぇよ、絶対にな」
「武‥‥‥」
武は翔の右隣に来ると左腕を肩に回して体を強引に寄せ、右手でゲンコツを作って翔の頭をぐりぐりとやる。
「それにな、嫌なことの一つや二つ、あって当然なんだよ。 俺なんて親から高校を卒業したらとっとと働け!! ってうるせぇんだぜ? 面倒ったらねーぜ」
「お前は頭悪いんだから仕方ないだろ?」
「うるせぇ! お前よりは上だろ!」
「んだと!?」
「何言ってる? 五十歩百歩よ」
「「‥‥‥」」
言い争う武と春人に、ルチアが氷の矢のように鋭く冷たい言葉を浴びせると、二人は撃沈してその場で膝と手をついて凹んだ。
「‥‥‥ふふ」
だが、笑いを堪えていた紗智が我慢しきれずに笑いを零した。
「はははッ」
「あははッ」
「ふふ‥‥‥」
それに釣られて翔、奈々、ルチアの三人も笑いを零す。
気づけばその空気は、いつもと何ら変わらい、だけど大切で幸せな空気となっていた。
まるで今まであった、翔の不安を嘲笑うかのように、翔の過去を受け入れた。
それでもまだ、友でいてくれると言ったことに翔は驚いて、嬉しくて、涙が溢れてくる。
そして翔は、そんな彼らのいるこの場所に、もう少しいたかった。
別れるのが、嫌だった。
だから翔は‥‥
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