第三章 兄弟の真実編
第一話 兄妹・焦りと再会
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番後ろの席の人は用紙の回収をお願いします」
時間になると、翔やルチアは席を立って縦の列の生徒の用紙を集めた。
全員、第三希望まで全て埋めていた。
先頭の席まで全員が同じように第三希望まで書いてあることに翔は、自分だけ置いていかれていると言う不安を感じる。
「ほんと‥‥‥どうしようかな」
焦りが少しずつ募っていた。
焦りの中、翔は中学生の頃よりも前、孤児院にいた頃のことを思い出した。
まだ‥‥‥全てが崩れ去る前のこと、翔は夢を持っていた。
それは――――――世界を旅することだ。
幼い頃から孤児院で育てられ、外には滅多に出ることはなられなかった。
義妹の一家に引き取られるまでの間、狭い空間で翔は似た境遇を持つ孤児院の友達と、世界一周などを夢見たことがあった。
孤児院の職員の人が持ってきた地球儀や世界地図、ガイドブックなどを一目見たときの衝撃を、翔は今も覚えている。
――――――世界は、こんなにも広いんだ!
その時の衝動は、そのまま現在の彼にある放浪癖に影響した。
それから翔や、翔の友人は何度も世界地図を広げては指差した国には何があるのか予想したり調べたりする日々が続いた。
予想‥‥‥いや、妄想と言うべきだろう。
妄想は尽きることなく、いつまでも話し込んだ。
だから翔は孤児院を出るとき、いつかこのメンバーで世界を旅しようと約束した。
‥‥‥だが、義妹の一家で生活することになった翔は、学校、バイト、家族との距離などを両立させるために努力しているうちに、いつしかそんな約束を思い出さない日々が続いた。
今は、夢のために耐えるときだと思っていたからだ。
夢のための資金、家族を養うための資金‥‥‥結局のところ、金だった。
金がなければ何もできないのだと悟り、理解したときから翔は必死だった。
そして‥‥‥“あの時”事件が起こってしまって――――――
「相良君、ちょっといいかしら?」
「‥‥‥あ、ああ」
翔は呆けていると、隣の席にいるルチアが声をかけてきて、返事が遅れる。
我を取り戻した翔は慌てて席を立つと、教室を出ようとするルチアの後を追いかけた。
その表情で、なんとなく事情は察した。
恐らく魔法使いとしての話しなのだろう。
となると屋上になるだろうと考えながら、ルチアについていった――――――。
***
「‥‥‥ここは、生徒会室?」
「ええ。 要件は中で話すわ」
たどり着いたのは予想とは違い、生徒会室だった。
生徒会室は、この学校の一階の一番窓際にあり、あまり目立たない場所にある。
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