第二章 迷い猫の絆編
第四話 迷い猫の涙
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れ果てた病院の屋上の修復を、魔法の力で始めるのだった。
***
「あなたが、あの龍と黒猫の主なのね?」
静香が龍と戦い出した頃、ルチアは少女『小鳥遊 猫羽』と相対していた。
ミウは砂汚れなどがついた白い病人服姿だった。
裸足で、この寒い季節に腕は露出しており、彼女の服装から暖かさは感じられない。
そんな彼女は、鎌を向けられている恐怖にも、この寒さにも震えることなくルチアの質問を聞いて静かに頷く。
「ショコラは私の友達なの。 あの龍は、私が何度も夢で見た、夢の中の友達」
「夢の中‥‥‥なるほど。 あなたには最初から生物系魔法使いの素質と、覚醒のきっかけがあったのね」
ルチアは、ミウの魔法使いとしての素質を見極めてからそう言った。
――――――召喚を主として戦う魔法使い、生物系魔法使いは極めて珍しい。
なぜなら、召喚する生物『魔獣』を呼ぶのが簡単ではないからだ。
召喚はそもそも、魔法使いのイメージ上に存在する魔獣が実際に存在する・存在したことが条件である。
本で読んでみたのをイメージするだけではなく、映像で見たものをイメージするだけでも足りない。
本当に、心そのものがイメージする魔獣こそが存在するものであることが素質なのだ。
そんな中でも、ミウは特殊な例である。
魔獣は基本的に一人一体とされていた。
なぜなら、心が求め、イメージする魔獣が一体が限界だとされていたからだ。
だがミウは、厳しい環境下に置かれていたため、心が求める魔獣が多かったのだ。
生まれてから、病室と言う籠の世界しか知らない彼女だからこそ、その素質を得たのだ。
「お兄ちゃんは、私の友達を傷つけたの。 だから私は許さない‥‥‥お姉さんも、敵?」
「‥‥‥ええ。 私はあの人‥‥‥相良翔の味方。 だからあなたは敵、ということになるわね」
ルチアはつい、彼女のその姿に悲しい表情を浮かべてしまう。
敵を殺すと言う、戦士の表情の中でも体は戦うことを拒絶するかのように瞳の奥は怯えていた。
怯えていても、大切な友達を失うが嫌だから、守るために戦うと言う決意。
二つの想いがぶつかり合って生まれた彼女の表情に、ルチアは先ほどまでなぜ相良翔が彼女との戦いで力を出せなかったのかを理解した。
彼の性格を考えれば、彼女のような少女を攻撃できるわけもない。
そこが彼の弱さであり、弱点である。
だがルチアはそれを、弱さとは思わない。
それは弱さではなく、優しさだと思った。
仮にそれが弱さだとしたら、ルチアはこう考える。
――――――彼の弱さを、私の強さで補う。
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