第二章 迷い猫の絆編
第三話 迷い猫の怒り
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のために、目の前にいる大切な人を斬ることへの疑問。
それが翔の中で募り、起き上がる力を削いでいた。
周囲は蒼い炎で包まれ、まさに焼けた戦場のようだった。
その場所で翔は、無力に倒れていた。
「お兄ちゃん‥‥‥ごめんね」
トドメと言わんばかりに、龍は再び口に魔力を集結させていく。
翔はそれを分かっていても、起き上がれなかった。
もう、どうすることもできなかった。
そして――――――再び蒼き焔が翔に向けて放たれた。
全てを諦めた翔は、力なく瞳を閉じて、全てが終わるのを待った――――――。
――――――「夜天より舞い降り、我らが敵の尽くを打ち払わん!!」
「ッ!?」
だが、耳に聞こえたミウとは別の女の声に翔は再び目を開けた。
聞き覚えのある、女の声。
そして翔の真上を通り抜けるように漆黒の闇がレーザー砲のように放たれ、龍の放った蒼き焔とぶつかり合って相殺させる。
収束し、放たれる闇――――――『|夜天撃つ漆黒の魔弾(ヴォーパル・インスティンクション)』だった。
「相良君、まだ諦めてはダメ。 まだ――――――諦めないで!」
「ッ!?」
その言葉に、翔は再び奮い立たされた。
全身に力が湧いてくる。
魔力も、満ち溢れてくる。
そして翔は、立ち上がった。
「理由なんていくらでも見つけられる。 大事なのは、諦めないこと‥‥‥見失わないこと」
「‥‥‥ああ。 そう、だったな」
翔は立ち上がると、 地面に転がったままの刀の柄頭を踏む。
刀は音を立てて回転しながら垂直に飛び上がる。
白銀の光を引いて落ちてくる柄に向け、右手を横薙に振るうと重い音とともに刀が翔の手に収まる。
「見失ってたな。 彼女は、|義妹じゃない。 全く違う子なんだ‥‥‥だから、これ以上の迷いはいらないはずだった。 俺は、魔法使いとしてあの子を止める。 手伝ってくれ――――――ルチア」
「ええ。 もちろん」
翔の声に答えるように、翔の左隣に立つのは、黒い衣を身にまとい、死神のように大きく鋭い鎌を持った――――――ルチア=ダルクだった。
‥‥‥そして、もう一人。
「私も協力します。 3対3なら、フェアです」
「井上‥‥‥静香先輩」
「ええ。 及ばずながら、私も戦いましょう」
右隣に現れたのは、白と桜色を強調した騎士風の戦闘服。
左腰には剣を収める白に桜色のラインが入った鞘。
右手には、その鞘に収められていたであろう剣があった。
刀よりも細身の、エストック型の形状をした‥‥‥レイピアだった。
圧倒的な存在感と威圧感。
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