第二章 迷い猫の絆編
第三話 迷い猫の怒り
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「お兄ちゃん。 お願い‥‥‥ショコラに手を出さないで」
「‥‥‥それでも、俺はショコラを倒さないといけない。 その姿のショコラを、俺はこの手で‥‥‥」
ミウの願いを断ると、ミウは残念そうな表情をした後、全てを覚悟した表情になる。
――――――人を殺す覚悟を決めた表情に。
「だったら、私とお兄ちゃんは敵同士だね‥‥‥」
「ミウちゃん‥‥‥」
翔の剣先が震える。
刀を安定して持つことができない。
心が動揺して、集中できない。
全身から、力が抜けていく。
ミウによるものではない。
龍でも、ショコラでもない。
ただ、相良翔自身が、怯えているのだ。
今、目の前に立ちはだかっているのは‥‥‥相良翔の義妹によく似た少女だ。
そして彼女もまた、翔のことを兄と慕ってくれた。
今も、敵同士である中、相良翔のことを兄と慕って呼んでいる。
翔にとってその姿は、まさしく義妹そのものだった。
相良翔と言う少年の、人生を変えてくれて、人生を変えさせてしまった少女に。
そんな少女、ミウを斬ることなんて翔にはできなかった。
ショコラに対してあった斬ると言う決意もまた、ミウによってかき消された。
文字通り、戦意喪失状態なのだ。
「私、お兄ちゃんが相手でも本気だからね」
「‥‥‥」
ミウはそう言うと、右手を天に掲げる。
すると龍は口を僅かに開ける。
龍の口の中は蒼き光――――――魔力によって光りだす。
光は徐々にその輝きを増し、超高密度の魔力体となっていく。
「天より舞い降りし龍よ、我が命に従い、仇なす敵を倒して」
ミウは脳に溢れる膨大な|魔法文字を複雑に組み合わせ、龍に魔法を与える。
初めて使う魔法にして、最強の魔法。
龍の口から放たれる、逆鱗の焔。
全てを燃やし、打ち倒す――――――『|龍放つ獄炎の焔(アオフ・ローダン・ボルケーノ)』
龍は溜め込んだ焔を一気に吐き出した。
蒼く光る火線が、長い尾を引いて宙を駆ける。
「‥‥‥」
翔に向かって真っ直ぐに迫るそれを、翔は避けることができなかった。
そして放たれた焔は翔の足元にぶつかると、巨大な爆発を起こして翔を巻き込んで吹き飛ばした。
吹き飛ばされた翔は低空に飛ばされると、地面に転がるようにして倒れた。
その手から天叢雲は離れ、地面に音を立てて転がる。
「ぅ‥‥‥ッ」
どうすればいいのか、翔は分からなくなっていた。
今ここで起き上がる意味、立ち上がる意味、武器を手にする意味、戦う意味。
全部‥‥‥分からなくなっていた。
名も知らない誰か
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