第二章 迷い猫の絆編
第三話 迷い猫の怒り
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で救える体を、どうしてもっと早く救ってくれなかったのか?
もっと早く手を打てば、今頃彼女は、もっと自由にはばたけていたはずだ。
それなのに、どうして‥‥‥。
それが、黒猫『ショコラ』の怒りなのだろう。
そして今の姿は、今まで抑えてきた怒りと苦しみが解き放たれた姿なのだろう。
『フザケルナ‥‥‥フザケルナァァァ!!!!!!』
「まずいッ!」
ショコラは右手を大きく振り上げると、勢いよく病院の屋上に叩きつけようとした。
翔はミウを離れた位置を優しく置くと、再び雷を身に纏い、叩きつけられる地面に向けて走る。
そしてたどり着いた翔は、脳に流れる膨大な|魔法文字を複雑に組み合わせて、魔法を作り出す。
迫る大きな力を抑え、病院を破壊させないための力。
今まで見せたこのない、新たな魔法の力を翔は発現させた。
「大地より求めよ、巨人の力ッ!!」
『ッ!?』
その時、迫るショコラの右手の動きが止まった。
だが、病院にも被害はなかった。
「ぐ‥‥‥ぉ、ぉおおおおお!!!」
それは、翔によるものだった。
全身に魔力を均等に分け与え、地面もショコラもダメージを与えないようにした。
翔の全身は茶色い魔力を鎧のようにまとっていた。
過去にいた、大地の巨人のように圧倒的な怪力の力をその身に与える身体強化魔法――――――『|土星与えし巨人の鎧(ウィルダネス・シュラーク)』
「やめろショコラ! この病院を壊しても、何の意味もない!!」
『うるさい! お前に何が分かる!? ずっと、ずっと何もできずに、ただ苦しみに耐える主の姿を見ていることしかできないこの気持ちを、お前なんかに分からないでしょ!?』
「ショコラ‥‥‥」
最初は、翔のことをあなたと呼んでいたが、今は怒りと暴走のせいでお前になっていた。
それだけ、怒りが溜まっていたということになる。
‥‥‥だが、翔には理解できることがある。
翔もまた、何もできなかった人の一人だから。
「分かるよ。何もできない‥‥‥無力な自分を感じる日々、俺もそんな日々があったからさ」
『なら、止めないで!!』
「いや、だからこそ止める!!」
翔は思った。
ミウが自分の義妹だと言うのなら、ショコラは‥‥‥相良翔自身なのではないのかと。
どんなに辛くても、辛いことを笑顔で話す姿を何度も見ても、その苦しみを共有できなくて、それをただ見ていることしかできない無力さ。
そんな日々は、翔も経験したことがある。
だからこそ、翔とショコラは似た者同士なのだと思った。
そして、そんな苦しみも、痛みも、怒りも、全部理解でき
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