第五章
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温かくさせた。確かに歳月は経ったがそれでもだった。そこにあるものはずっとそのままだったことを知ったのだ。
「いや、それで今も読んでくれてるんだ」
「それで俺今もマガデーとかテレマガくんにも描いてますけれど」
相変わらず筆が速い彼である。
「今の子供達からもファンレター来ますよ。面白いって」
「今の子供達からもなんだ」
「そうなんですよ。時代は変わってますけれどね」
変わったどころではなかった。この店の外にしろ最早別世界である。彼等の若い頃にあったあの大きなブラウン管のテレビも黒電話もない。何もかもが変わっていた。
「それでも。皆読んでくれてますよ」
「そうなんだね。今の子供達も大人になった人達も」
「はい、読んでくれてるんですよ」
龍二がそれが最高に嬉しいのであった。言葉にもはっきりと出ている。
「今も」
「それで笑ってくれてるんだ」
こう思うと康平は。言わずにはいられなかった。
「じゃあ僕達もまだまだ頑張ろうか」
「俺はずっと描きますよ」
龍二は若い頃からのガッツポーズをここでも見せた。
「これからもね」
「僕もこれから頑張っていくか」
康平も龍二の言葉に応える形でまた満面の笑みを浮かべた。
「子供達の笑顔を見たいからね」
「漫画ってそうですよね」
龍二は漫画についても言った。
「やっぱり。その心を楽しませるものですよね」
「ジャンルは色々あるけれどね」
それこそホラーもあれば悲劇もある。これはもう二人共承知していることだ。だがそうしたことも全て含めて楽しませると表現したのである。
「それでも。やっぱりね」
「はい、楽しんでもらいましょう」
この気持ちはまさに不変であった。
「これからもずっと」
「その通りだね。じゃあ今日は」
「はい、また帰って描きます」
奇しくもあの若い時と同じ言葉であった。
「もう死ぬまで描きますよ」
「僕も漫画の為にまだまだ働くか」
康平もそのつもりだった。
「定年になってもね」
「定年なんてないですよ」
龍二がそんなことを気にする筈もなかった。
「もうね。ただ一直線に描いていくだけですよ」
「ブログとかサイトで紹介していこうかな」
康平も時代は感じていた。だからここでは現代の技術を話に出した。
「そうやってこれからも」
「俺も自分のサイト持ってますしね」
気の若い龍二ならではだった。
「ブログも」
「じゃあそういうものも使って」
「はい、やっていきましょう」
強く誓い合った対談であった。二人の漫画への情熱は不変だった。時代が変わっても笑顔と情熱は変わらない。彼等も子供達も。
笑顔と情熱 完
2009・6・23
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