第二章 迷い猫の絆編
第二話 迷い猫の痛み
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ミウをこの世界に閉じ込める病なのだと。
翔は左腕で彼女の体を包み込み、右手でベッドのそばに置いてあったナースコールの赤いボタンを力強く押す。
「うぐぅ!」
「ミウ! 大丈夫だ! 今すぐ医者が来るからな!」
とはいえ、ここは病院の最上階である5階の、さらに一番端にある病室。
医者が道具を持ってこちらに駆けつけるまでそれなりに時間がかかる。
「(俺は‥‥‥その間、何もせずにいろってことなのか!?)」
ただ無力に、彼女のそばにいることしかできないのだろうか?
翔は‥‥‥嫌だった。
義妹とよく似てる少女‥‥‥翔は、守りたいと思った。
そんな少女が今、生死の境目にいる。
ここで何もできないのは‥‥‥嫌だった。
「‥‥‥大丈夫。 お兄ちゃんが絶対に守る」
――――――もう二度と、大切なものを失わないために。
「‥‥‥」
翔は目を閉じ、魔力を込める。
脳に流れる膨大な|魔法文字を複雑に組み合わせ、魔法を発現させる。
病魔と言う苦しみに耐える大切な人を救う、魔法。
「神聖なる湖より求めよ、癒しの加護!!」
翔の全身は水色の魔力光に包まれる。
そしてそのまま翔は苦しみに耐えるミウを、そっと抱きしめた。
「お兄‥‥‥ちゃん」
すると、ミウの心臓の痛みは徐々に無くなっていく。
彼女にとっては、奇跡的な瞬間だったと言えるだろう。
相良翔が発動させたのは、治癒魔法『|水星癒す聖なる光』より更に上位の魔法。
湖の更に奥にある、神聖なる湖より得た、湖の精霊の加護――――――『|水星癒す神聖なる光(ウンディーネ・ハイルング)』
完全治癒を目的とした魔法で、この魔法を受けたものの傷・病は全て完全に癒されていく。
癒されたミウは、気持ちよさそうに頬を緩めて翔に優しく囁く。
「お兄ちゃん‥‥‥天使、みたい」
「天使?」
「優しくて‥‥‥かっこよくて‥‥‥私を助けてくれて‥‥‥私のお兄ちゃんで、天使みたい」
「‥‥‥そう、か」
その言葉で、救われた気がした。
誰でもない、自分自身が‥‥‥救われた気がした。
とにかく、助けることが出来て良かった。
大切な‥‥‥大切な、女の子を――――――。
――――――『フザケルナ』
「ッ!?」
だが、ミウの病室を飲み込むほどの巨大な爆発が、翔とミウを包み込んだ。
病室は爆発して、残ったのは――――――巨大な姿になった、黒猫のショコラだった――――――。
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