第二章 迷い猫の絆編
第一話 迷い猫の噂
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小さく細身の体、小さな爪がある四本の足。
黒くふわふわとした毛並みに、人間とは違い縦に広がる黄金色の瞳と瞳孔。
愛くるしい顔をしたその黒い影の正体、それは――――――黒猫だった。
それが、少女の大切なたった一匹の友達。
「えへへ‥‥‥“ショコラ”言っても分からないよね」
苦笑いしながら、愛猫の名前『ショコラ』の頭を撫でる。
気持ち良さそうに目を細めながら体をクネクネさせるショコラに、少女は再び微笑みを取り戻す。
この癒しの存在は、永遠と言う籠の中にいる彼女にとって、唯一与えられた幸せの時間だった。
笑顔と幸せをくれる、小さな黒猫。
少女はショコラを撫でながら、それをしみじみと感じていたのだった。
《‥‥‥ミウ》
そして、この黒猫『ショコラ』もまた、この籠の中に閉じ込められた少女のことを誰よりも大切に思っていた。
自分にはただ、笑顔を与えることしかできない。
ただ、それだけしかできない。
それがショコラにとって、大きな辛さだった。
自分の命に変えてでも、この主人の笑顔と幸せを守りたくて、与えたくて‥‥‥。
ただ、それだけの思いだった。
自分以外の誰でもいい。
――――――この、孤独の籠に閉じ込められたご主人様を‥‥‥守ってあげて。
その想いだけが、ソラに木霊していくのだった――――――。
***
<放課後>
学校が終わった翔達は、いつもの道を通って帰る。
綺麗な夕日が広がるソラに、いつものように黄昏る翔。
そんな翔の空気を壊すように騒ぐ武達。
それを見て笑う紗智。
どこか距離を置くように歩くルチア。
そんな関係が、彼らの間には生まれていた。
その関係にも慣れてきている彼らはそれに違和感を持たず、普通に歩いていた。
「おっと、それじゃ俺と春人はここで」
「ああ。 また明日」
春人と武は分かれ道で翔達と別れる。
また明日と言って手を振り、二人は走り去っていく。
「それじゃ私、ここで」
「また明日、紗智」
「うん。 また明日」
「‥‥‥またね、七瀬さん」
「うん。 ルチアちゃん」
紗智も途中で別れ、残りは翔とルチアの二人となった。
紗智の影が消えたところで、翔とルチアは“こちら側の話し”をする。
そう。魔法使いとしての話しを。
「相良君は黒猫の噂を、魔法に関するものって考えてるのかしら?」
「さぁな。 でも、死んだ猫がご主人様のことを願ってこの世界に霊として現れたって言うなら別におかしな点は存在しない気もする
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