第四章
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第四章
「手塚先生だってそれ位描いていますよね」
「まあね」
それは事実だった。この当時の巨匠と呼ばれる漫画家はそれだけの量を描いていたのである。だから藤子不二雄にしても石ノ森章太郎にしてもその作品量はかなりのものになっているのだ。彼等はまさに漫画に対して全てを賭けていたのである。命までも。
「じゃあ俺だって」
「また何でそこまでやれるんだい?」
康平はまた思わず彼に言ってしまった。
「そこまで。漫画を描くことが好きにしても」
「ええ、それはですね」
「うん」
「皆笑顔になってくれるからですよ」
こう言うのだった。彼もまた屈託のない笑顔になって。
「だからですよ。描けるんですよ」
「笑顔って?」
「はい、子供の笑顔です」
これが彼の言葉であった。
「それがあるからこそです」
「そう、子供の」
「だから描くんですよ」
鼻息は荒いままであった。
「今もこれからも」
「そうか。だからか」
「やっぱり嬉しいじゃないですか」
屈託のない笑顔もそのままだった。心からそれが嬉しい顔であった。
「そうやって皆が俺の漫画で笑ってくれるってことが」
「わかったよ。じゃあ頑張ってくれ」
「はい、描きます」
彼は言い切った。
「これからもずっと」
こう言って彼は描き続けるのだった。そんなある日のこと。二人が漫画の打ち合わせで喫茶店で話をしたその帰りだった。街の本屋の前を横切ったその時である。
「あっ、週刊マガデー読んでますよ」
「そうだね」
康平は龍二のその言葉に頷いた。
「読んでるね、皆で」
「ほら、俺の漫画読んでますよ」
龍二は今度は自分の漫画のページが開かれていることを確認して言った。
「俺の漫画、ほら今」
「ああ、そうだね」
康平もそれを見て頷く。
「楽しそうに読んでるね」
「いや、嬉しいですよ」
その子供が自分の漫画を読んで笑っているのを見て彼も笑みを浮かべた。
「ああして読んでくれて笑ってくれて」
「だからこそ描くんだったね」
康平はその龍二に対して問うてきた。
「君は。だから」
「はい、これからもずっとですよ」
そしてまたこう言うのであった。街中でも。左手はノートを持っていて塞がっているが右手は空いている。その空いている右手でガッツポーズをしながらの言葉だった。
「描いていきますから」
「そうだね。じゃあ僕は」
「康平さんもやっぱり」
「子供の笑顔を何時までも見たいね」
彼もまたそれは同じなのだった。
「やっぱり」
「そうですよね。だから俺描きますよ」
「また帰ったら描くのかい」
「当たり前じゃないですか」
熱い言葉で語るのだった。
「だから俺漫画家なんですよ」
「そこまで言えるのが凄いよ」
康平はそんな彼の言
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