第一章 日常と非日常
第五話
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<PM12:00>
「おい、相良! どうしたんだぁ〜!」
「ん‥‥‥っ」
耳を通って脳を貫くような、騒音に近い声が聞こえる。
この声で彼は意識を覚醒させる。
彼とは、つい12時間ほど前まで命懸けの戦いを繰り広げ、さらには魔法使いになった少年『相良 翔』その人である。
そして彼は今の今まで、午前中の教科全てを睡眠と言う時間に使っていた。
本人曰く、人生初の授業を堂々とサボる行為である。
教科の先生に悪いことをしたなと罪悪感を抱きつつも、今日だけは許してくださいと心の中でそっと祈るのであった。
そして翔は今、つい先日に友人となった少年、『三賀苗 武』によって目を覚まし、現時刻がお昼の12時であることを理解していた。
武の両隣には、彼の友人でありクラスメイトの『桜乃 春人』と『七瀬 紗智』の二人がいた。
二人共、翔が目覚めるのを待っていたらしい。
「翔、お昼だ。 昼飯買いに行こうぜ!」
「お‥‥‥おう」
まだ半覚醒状態の翔は、購買に行くこと以外は考えるのが苦しい状態になっていた。
そのため、返事もどこか力なく覇気のないものとなっていた。
とりあえず意識を取り戻すために、体を動かそうと思った翔は席を立つと、武を先頭に教室を出た。
今日もまた購買で苦戦するのだろうなと、取り戻しつつある意識の中で思った。
「相良君、元気ないけど‥‥‥どうかしたの?」
翔の右隣を歩く紗智は、翔の顔を覗き込むようにしてそう聞くと、翔は逃げ笑いしながらその質問に答えた。
「ああ、昨日ちょっと夜ふかししてさ。 俺、引っ越してきたばかりだから色々と環境に慣れなくて眠れなくてさ」
「そうなんだ‥‥‥大変だね」
「ああ。 そうだな」
魔法使いとなって戦っていた、なんて言ったところで信じてもらえるはずもないと思った翔はそれらしい嘘をついて紗智たちを納得させた。
そして廊下の窓から、外の景色をのんびりと眺める。
「(‥‥‥さっきまで、俺は命懸けで戦ってたのか)」
あまりにも実感が沸かないのはなぜなのだろうか、と翔は一人で悩んでいた。
『狼男』と呼ばれる魔法使いの男との戦いは、あまりにも壮絶だった。
わずかでも気を抜けば、間違いなく死んでいた戦いは翔の中でも一番記憶に残ってしまうであろう経験だった。
人生で始めて刀を握り、魔法と言う未知の力を使って激しい戦いを繰り広げたにも関わらず、今はその実感が沸かない。
あれは全て夢だったのだろうかと感じてしまうほど、現実味がない。
「(まぁ、魔法を使うのは多分これきりになるだろうけどな‥‥‥)」
そう、彼はこれ以上、魔法を使うこと
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