第一章 日常と非日常
第五話
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チアの表情に翔は苦笑いしてしまう。
きっと目を大きく見開いて口をパクパクしているのだろうなと、失礼だが勝手な想像をしてしまう。
「みんなはOKだって言ってたから、あとはルチアが行けるかどうかによる」
《えっと‥‥‥》
それから約10秒ほど、無言の状態が続いた。
《‥‥‥ええ。私も、行こうかな》
「そうか! じゃ明日、服装とか荷物は自由だから」
《分かったわ》
「それじゃ明日!」
そう言って翔は電話を切った。
「‥‥‥明日は、楽しくなりそうだな」
そういう期待を込めて、翔は走って帰っていくのだった――――――。
***
<その頃、ルチアの部屋では>
「ど、どうしよう‥‥‥」
2LDKの一人部屋の、黒いカーペットに小さなガラス張りのテーブルに置いた携帯を眺めながらルチアは女の子座りで悩んでいた。
つい数秒前まで、ルチアは相良翔と電話をしていた。
人生初の、同級生との電話である。
初めてかかってきた同級生からの電話に動揺して、通話に出るのが遅くなった。
そのこともあるが、何よりも遊びに誘われたと言うことには一番動揺した。
なぜなら、そういうことに誘われたのも人生で初めてだからだ。
「服、どれにしよう‥‥‥派手じゃダメだし、地味だと笑われそうだし‥‥‥」
などと、黒いクローゼットの中にある服を見ながらそうぼやくルチア。
人生で初めて友達と言うものを作り、初めての友達と共に遊びに行く。
そんな、誰もが経験することを、ルチアは初めてする。
今思えば、なぜ今まで経験しなかったのだろうかと疑問にも思うほどだ。
「‥‥‥相良、翔」
ルチアは、人生最初の友達である彼の名を思い出した。
不思議な人だった。
隣の席になった転校生で、夜に偶々出逢って、魔法使いになって一緒に戦って。
今日は彼の過去を聞いて、彼が自分とよく似ているのを知った。
親近感と言うものを、初めて知った瞬間だった。
全てが、初めての明日‥‥‥思うことはただ一つ。
「幸せになってるのよね‥‥‥」
初めて感じる、本当の幸せ。
だからこそ、日々を大切にしたいと思う。
明日も、明後日も‥‥‥この先も――――――。
だからルチアは、これからも戦う。
魔法使いとして‥‥‥一人の人間として。
それが、ルチア=ダルクの存在理由なのだから―――――。
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