暁 〜小説投稿サイト〜
魔法使いの知らないソラ
第一章 日常と非日常
第五話
[8/8]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
チアの表情に翔は苦笑いしてしまう。

きっと目を大きく見開いて口をパクパクしているのだろうなと、失礼だが勝手な想像をしてしまう。


「みんなはOKだって言ってたから、あとはルチアが行けるかどうかによる」

《えっと‥‥‥》


それから約10秒ほど、無言の状態が続いた。


《‥‥‥ええ。私も、行こうかな》

「そうか! じゃ明日、服装とか荷物は自由だから」

《分かったわ》

「それじゃ明日!」


そう言って翔は電話を切った。


「‥‥‥明日は、楽しくなりそうだな」


そういう期待を込めて、翔は走って帰っていくのだった――――――。



                  ***





<その頃、ルチアの部屋では>


「ど、どうしよう‥‥‥」


2LDKの一人部屋の、黒いカーペットに小さなガラス張りのテーブルに置いた携帯を眺めながらルチアは女の子座りで悩んでいた。

つい数秒前まで、ルチアは相良翔と電話をしていた。

人生初の、同級生との電話である。

初めてかかってきた同級生からの電話に動揺して、通話に出るのが遅くなった。

そのこともあるが、何よりも遊びに誘われたと言うことには一番動揺した。

なぜなら、そういうことに誘われたのも人生で初めてだからだ。


「服、どれにしよう‥‥‥派手じゃダメだし、地味だと笑われそうだし‥‥‥」


などと、黒いクローゼットの中にある服を見ながらそうぼやくルチア。

人生で初めて友達と言うものを作り、初めての友達と共に遊びに行く。

そんな、誰もが経験することを、ルチアは初めてする。

今思えば、なぜ今まで経験しなかったのだろうかと疑問にも思うほどだ。


「‥‥‥相良、翔」


ルチアは、人生最初の友達である彼の名を思い出した。

不思議な人だった。

隣の席になった転校生で、夜に偶々出逢って、魔法使いになって一緒に戦って。

今日は彼の過去を聞いて、彼が自分とよく似ているのを知った。

親近感と言うものを、初めて知った瞬間だった。

全てが、初めての明日‥‥‥思うことはただ一つ。


「幸せになってるのよね‥‥‥」


初めて感じる、本当の幸せ。

だからこそ、日々を大切にしたいと思う。

明日も、明後日も‥‥‥この先も――――――。


だからルチアは、これからも戦う。

魔法使いとして‥‥‥一人の人間として。


それが、ルチア=ダルクの存在理由なのだから―――――。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ