第一章 日常と非日常
第五話
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」
「ええ。 昨日の件の続きよ」
予想通り、と言う結果に翔は小さくため息をついた。
外れていて欲しかったと内心思っていたからだろう。
ため息をついている翔を見て、ルチアは少し間を置いてから話しをした。
「‥‥‥昨日、翔が帰ったあと私は斑鳩さんの勧誘を受け入れたわ。 今後は井上さんや他の魔法使いたちと共に事件を解決させていく予定よ」
「そうか。 なら、これからはルチア達に任せれば事件の心配はいらなそうだな」
「‥‥‥」
不意にルチアは無言で、翔の瞳を覗き込むように見つめた。
翔は突然のことに警戒して、半歩後ろに下がった。
しばらく見つめると、ルチアは聞いた。
「どうして? どうしてあなたは誘いを断ったの?」
「それは‥‥‥」
躊躇う様子の翔に、ルチアは半歩踏み込む。
「死ぬのが怖いから? 負けるのが嫌だから?」
「‥‥‥」
「あなたの答えを、聞かせて」
「‥‥‥」
無言の翔に、ルチアはさらに半歩詰め寄る。
「あなたの力は特殊で極めて稀なの。 その力があれば、私も井上先輩でも守れない人達をたくさん守れる。 それだけの力があるのに、どうして使おうとしないの?」
「‥‥‥」
次第にルチアは、翔の顔のそばまで詰め寄っていた。
そこまで来たところで、翔は大きなため息をつくと|呻くように答える。
「言いたいことは、それだけか?」
「そうね。 私が言いたいのは一つ――――――あなたの力を貸してほしい」
ルチアは姿勢を変えず、真っ直ぐな瞳で翔を睨むようにそう言った。
その強い視線に、翔は内に溜め込んでいた思いの一部を放った。
「いい加減にしてくれ。 俺は別に、知らない誰かのために魔法使いになろうと思ったわけじゃない」
「誰かのためなんて考えなくていい。 ただ、事件解決のためだと思ってくれるだけでいいから、力を貸してほしい」
「断る。 俺は、普通の高校生活を送って普通に大人になりたいんだ。 魔法使いなんて訳のわからない世界に身を置くつもりはない」
翔は、どうしても断りたかった。
今の、紗智達と過ごす日々を選んでいたからだ。
あの3人と過ごす日常が、とても眩しくて憧れていた関係だからだ。
冬の寒さも忘れられそうなほどに温かい関係を、いつまでも長く続けたかった。
それを壊すように、魔法の世界に身を染めようとは思わない。
「‥‥‥それが本音なの?」
「え?」
だが、ルチアは全てを見抜いていた。
今の言葉が、本音ではないということを見抜いていた。
だから翔は言葉を詰まらせて、半歩下がった
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