第一章 日常と非日常
第三話
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る。
「このッ!!」
迫る爪を、隣にいた翔は飛び蹴りで軌道を逸らす。
その隙にルチアは鎌をもって狼男と一旦距離を取る。
「ありがとう、相良君」
「どういたしまして!」
そう言うと翔は狼男とは距離を取らず、迫る両爪を一本の刀を光速で振って対応する。
防戦一方になるのを予想していたルチアだが、翔は防戦一方どころか攻めと防御の両方をこなして戦っていた。
狭る爪を避け、いなしつつ、隙を作っては魔力を刀身に込めて一撃を放つ。
右から左、左から右、それを繰り返しているうちにもはや目で見るのが辛くなってくる。
それほどまでの速さで翔は刀を振るい続ける。
まるで、昔から剣の道を歩んできていたかのような、そんな熟練者のような素早い動きで。
そして翔自身、自分がここまで対応していることに終始驚きを隠せなかった。
光速の域に達しているであろう速度の攻防を正確に見切り、対応して攻撃まで当てている。
甲高い金属音が何度も響き、白銀の火花を散らしていく。
何度も剣撃を阻まれながらも、諦めることなく振るい続ける。
一度でも動きを止めれば刺されるか切られるかして終わる。
その間に、ルチアが立ち入ることはできない。
「‥‥‥それなら」
ならば、ルチアにできるのは、ギリギリの戦いをする相良翔を離れた場所から支援すること。
たった一人で戦わせたりはしない。
そう心に決め、ルチアは再び意識を集中させる。
脳に流れる膨大な|魔法文字を組み合わせていく。
先ほどよりも強力な一撃のために、先ほどよりも膨大な|魔法文字を組み合わせる。
ここからは、一度のミスも許されない。
速く、丁寧に、正確に作り上げる。
「夜天より舞い降り、我らが敵の尽くを打ち払わん!!」
詠唱を唱えるうちに、足元にルチアを中心に円形の魔法陣が現れる。
紫色に光輝く魔法陣は時計回りに回転していき、力を高める。
そして左手を狼男の方向に真っ直ぐ向ける。
すると手のひらに黒い闇が渦を巻いて集結していく。
そして円形の球体を作り出す。
「(お願い‥‥‥相良君‥‥‥!)」
ルチアは、相良翔の可能性に賭けた。
魔法使いとしては未熟で、まだ何も理解できていないけれど、可能性に満ちている。
彼の力は、あまりにも未知のものだからこそ、賭けるにたる存在なのだ。
そしてルチアは信じる。
今、ルチアが作り出した強力な一撃を直撃させるための隙を作ってくれると信じて――――――。
***
「ぅ‥‥‥ぉぉぉおおおおッ!!」
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