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魔法使いの知らないソラ
第一章 日常と非日常
第三話
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のは魔法使いじゃなくて、文字通り狼男ってことか!?」

「ええ、そうなるわね」


狼男は魔法を操れず、逆に操られてしまった。

ミイラ取りがミイラになったような話だ。

なんとも哀れな光景だと翔とルチアは思った。

だが、暴走したとなれば哀れんでいる場合ではない。


「とにかく、あの暴走した狼男を止めないと」

「なら、迷うことはないな」


翔がそう言うとルチアは頷いて返し、二人は肩を並べて狼男の方を向く。

そして二人は再びその手に刀と鎌を持ち、各々動きやすい構えを取る。

遠い間合いから、暴走した狼男の出かたを伺う。

‥‥‥そして、その時は来た。


「グォォォッ!!」

「せいッ!!」

「はぁっ!!」


狼男が大地を蹴り上げてこちらに飛びかかったところで、二人も同時に大地を蹴り上げる。

遠かった間合いは一瞬のうちに近距離へと変わり、狼男の両爪と翔とルチアの刃がぶつかり合う。

重なる二人の呼気に、二人は互いの息があって戦えていることを実感する。

だが、その途方もない衝撃に翔とルチアはジリジリと押されていくのを感じる。


「なんて力だ‥‥‥!」

「重い‥‥‥ここまでなんて」


ルチアも、流石にここまでとはと、予想外の力に驚きを隠せなかった。

暴走状態、魔法に飲み込まれてとはいえども、二人がかりでぶつかってここまで押されるとは思わなかった。

ここまで力が増大する要因は恐らく、魔法の力で強化された彼の体にある。

 彼の魔法は、『狼』と言う存在の召喚ともう一つ。

 狼と言う存在を自分の力に加えること。

 先ほどまで戦っていた狼男は、自らを狼と同化させることで並以上の力を発揮していた。

 だがそれは、魔法使いの許容範囲内での力であって、決して限界を超えた力ではないのだ。

 人間が筋力の20%以上も出せないのと同じように、魔法使いにも限度がある。

 ‥‥‥だが、現在戦っている狼男は恐らく暴走状態にあるため、その限界を超えて発揮している。

 先ほどの倍以上の力を発揮しているのも、恐らく暴走しているから。


「‥‥‥ならッ!」


ルチアは鎌を地面に突き刺し、それを軸に逆さまになって独楽のように回転しながら狼男の顔に回し蹴りを食らわせる。

顔面ならば脳に振動を与えて倒せばいけると考えたのだ。


「グ、ゥゥゥアアアア!!!」

「ッ!?」


だが、狼男の体はルチアの想像の数手先にあった。

その暴走状態の狼男は、その全身が鋼以上の強度を誇っていたのだ。

当然、ルチアの蹴りは通用せず、狼男は何もなかったかのような表情で、空いた爪でルチアを突き刺そうとす
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