第一章 日常と非日常
第三話
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見で使いこなす彼、相良翔。
彼の魔法は、ルチア=ダルクの知る今までの魔法で一番異能だった。
「‥‥‥とにかく、助けてくれてありがとう。 助かったわ」
「いや、魔法で援護してくれてたから、貸し借りなしだ」
「ええ。 そういうことにしてもらえると嬉しいわ」
そう言うとルチアは安堵したように小さく微笑む。
「ッ‥‥‥」
「‥‥‥? どうかした?」
「いや、なんでもない」
「?」
その微笑んだ表情を始めて見た翔は、しばらく見惚れてしまった。
我を取り戻したあとでも、彼女の微笑んだ表情が頭から離れず、言葉にできない不思議な感覚に囚われてしまった。
「‥‥‥と、とにかく、あの男はどうするんだ?」
気を紛らわすために、話題を出すとルチアは冷静に答える。
「警察に出すわ。 警察には、魔法使いを取り締まる部署もあるから」
「‥‥‥そうなのか?」
魔法使い、そんな非現実的な存在を信じて、さらにそれを取り締まるような部署が警察に存在するとは驚きだった。
とりあえず、その部署とやらに連れていけば万事解決と言うことらしい。
それを理解した翔はルチアと共に狼男の方を向いた。
「「え――――――ッ」」
だが次の瞬間、二人の目に映った光景に言葉を失う。
狼男は間違いなく、翔がその手で斬った。
少なくとも起き上がることなんてできるわけがない。
それが常識で、そうでなければむしろ異常だろうと思っていた。
‥‥‥だが、その理解は“人間であることを前提とした常識”であったわけで“魔法使いであることを前提とした常識”ではない。
その違いが、今の現実を驚きのものへと変えたのだ。
「グゥゥゥオォォォッ!!!」
「「ッ!?」」
全身は黒の毛で覆われ、太く筋の多い筋肉。
暗闇でもはっきりとわかる、紅く光る二つの瞳。
鋭く列をなす牙と、長く鋭い爪。
大地はその存在を支えきれず、穴が空く。
黒く染まりあがった姿は、まさに黒き野獣。
その野獣が放つ雄叫びは、大気を揺るがし、空気を振動させる。
「なんでだ!?あいつは倒したはずじゃ‥‥‥!?」
「でも、あの狼男からは意識を感じられない‥‥‥。 多分、魔法そのものに飲み込まれたんだ」
「どう言うことだ?」
ルチアの経験からでた答えは、翔にとって驚くべき内容だった。
「魔法は決して万能なものじゃないの。 使用者の心で強くも弱くもなり、脆くも強固にもなる。 あの人は魔法と言う大きな力に心が負けて、魔法そのものに食われて‥‥‥暴走してる」
「ッ‥‥‥それじゃ今、あそこにいる
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