第一章 日常と非日常
第二話
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<PM22:00>
満月が雲一つないソラで一際目立つ夜。
外は街灯の僅かな光で照らされる。
人一人歩いておらず、皆家で徹夜で勉強か、疲れを取るように眠りについている時間。
そんな時間に相良翔は、灯火町を歩き回っていた。
学校に行く時に着ていた白いコートを着て、黒いズボンを履いた姿の彼は両手をポケットの中に突っ込んだ状態だった。
「‥‥‥しまった、もうこんな時間か」
いつもの黒いスマートフォンを起動させて、時刻を確認すると既に夜の10時。
かなり歩きこんでいた。
それもそのはず、相良翔が外出したのは夜8時。
つまり4時間は軽く歩き込んでいるのだ。
彼をそうさせる原因、それは彼の放浪癖にあった。
相良翔は孤児院と言う狭い空間しか知らなかったため、外に出て自由になって以降、放浪癖が身についてしまった。
そのせいもあり、退屈を感じると外に出てのんびりと散歩をしてしまう。
気づけば数時間も歩き込んでいる。
そして今日も、引っ越してきたばかりの町に対しての好奇心と、家にいる退屈さが相まって町を散歩してしまっているということになる。
だが、流石に夜の寒さと僅かながらの睡魔もあるため、そろそろ家に戻ろうと提案する。
「明日も学校だし‥‥‥さっさと帰るか」
そう言うと翔はスマートフォンの画面を右親指でスライドさせて画面を変える。
変わった画面にあるアプリ『マップ』をスライドさせていた親指で軽くタッチすると、アプリは起動して現在地を地図にして表した。
そして登録してある、自分の自宅を探すと自分の自宅から現在地までのルートを翔は確認する。
「結構歩いたな‥‥‥」
そうぼやきながら、翔は帰り道に足をすすめる。
早く家に戻り、暖房の恩恵に縋りたい気持ちを抱えつつ足を運ぶ。
そして明日の授業はなんだったのだろうと思い出そうとしていた‥‥‥その時――――――!!
ギィィィンッッ!!
不意にどこからとなく、金属が擦れ合うかのような音が夜の町を木霊する。
黒板を爪で引っ掻いた時のような、背筋が疼いて鳥肌が立つ。
「な‥‥‥なんだ!?」
灯りの少ない真夜中、ということもあり恐怖感を隠しきれない翔はキョロキョロと辺りを見渡す。
だが、翔の視界の中には特に音の原因となるものがなく、恐らくここから遠くなく、なおかつ翔から近い距離からのものなのだろうと考える。
「‥‥‥」
このまま家まで走って帰ろう‥‥‥普通ならそう考えるはずだ。
翔自身、最初はそう考えて歩きだそうとした。
だが、その考えを揺るがす程の強烈な胸騒ぎが翔を襲っていた。
ドクンッ!ドク
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