第一章 日常と非日常
第二話
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痺毒の効果があってな? 噛まれたら数時間は痺れるぜ?」
「なっ!?」
致死性はないといえど、それは武器を主体として戦うルチアにとって大きなダメージとなる。
「さて、トドメは俺の下僕達にでも任せようか?」
そう言うと狼男が右手を前に出すと、何もない空間から再び10匹もの狼が出現する。
状況は絶対絶命。
武器を持てない彼女にとって、魔法だけで応戦できる実力がない。
「くっ‥‥‥」
それでも彼女は、諦めない。
最後まで抗う。
それが、彼女のアイデンティティだからだ。
戦うのなら、死ぬまで諦めない。
だから彼女は、再び脳の情報にある|魔法文字を組み合わせて、詠唱する。
それも、先ほどのような一体一体を倒すような魔法ではなく、一度に全体を倒す広域系の魔法。
それには先ほどよりも長い魔法文字を組み合わせなければならない。
「無駄だ! 喰らえ!!」
狼男は勝利を確信して笑をこぼして狼たちに指示を出す。
その指示に答えるように、10匹の狼はルチアを喰らわんとして飛びかかる。
だが、ルチアは詠唱をやめなかった。
最後まで、抗う。
チャンスはあるはずだと信じて。
「ルチアッ!!!」
そんなルチアの耳には、非力な少年の声が響き渡るのだった――――――。
***
「ルチアッ!!!」
非力な少年は、走っていた。
ルチアに向かって、走っていた。
先ほどまで、ただずっと眺めていた。
ルチア=ダルクという少女の勇姿を見ていた。
何もできず、無力に、ただ立ち尽くしているだけの自分とは別に、生きることに懸命な彼女の姿はとても美しく、輝いて見えた。
自分には、何もできないのだろうか?
そう考えていた時、ルチアに危機が訪れた。
だから翔は走り出した。
迷わず、ただ真っ直ぐに走っていた。
非力でも、何か出来ることがあると信じたからだ。
死にたくない。けれど、見捨てたくない。
翔はルチアのもとへ、全力で走る。
もう二度と、過ちを犯さないために――――――。
「ルチアッ!!!」
彼女の名を叫ぶ。
守りたい、助けたい。
だから、強く願う。
心の、魂の底から願う。
――――――この非力な俺に、力を――――――。
あのソラに願う。
どこまでも、どこまでも‥‥‥
「はぁぁぁぁッ!!!!」
翔は叫んだ。
天を貫かんとするほどの大きな声。
全身から溢れ出る力を抑えず、爆発させる。
「届けぇぇッ!!」
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