第一章 日常と非日常
第二話
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無力な人間だった彼女を一転、戦に身を投じる戦姫にする。
彼女のその姿を一言で表すのならそう――――――『戦乙女』。
そして彼女は、自らの持つその姿の名を言った。
「――――――|戦女神の戦慄(ワルキューレ)」
神話時代に存在した、戦死者を運ぶ女戦士。
その名を持つ魔法使いこそ、ルチア=ダルク。
「‥‥‥!」
ルチアは左手で鎌の半分程の一を両手で握ると、すっと重心を前に移動させながら右足を前に出す。
刹那、ギィィィンッ!!と言う激しく金属が擦れ合う音が響き渡ると同時にルチアの姿が消えた。
翔の瞳にはきっと、彼女の太刀筋は見えなかっただろう。
腰を軸に左に捻り、それを戻す勢いと鎌の重みを合わせて一閃を放つ。
その一閃で全ての狼を切り裂いた。
「‥‥‥出てきなさいよ。 狼達の主さん」
狼を一撃に一掃した彼女は、その狼をこちらに仕向けた張本人を呼ぶ。
ルチア同様に、異能の力を持つ‥‥‥魔法使いの存在。
あの数を操るということは、この場所からそう離れていない場所に主はいる。
そう考えたルチアは主を探す。
‥‥‥そのルチアの行動をの手間を省くかのように、暗い影から一人の男性が姿を現す。
髪がトゲのように立っていて、鋭い目つきをしている。
黒いジャンバーと黒いジーパンの姿でこちらに向かって歩いてくる。
「まさか一撃で全滅とは思わなかったぜ。お見事」
賞賛しながら歩いてくる彼こそ、狼使いなのだろう。
「それで、俺に何の用かな?」
「あなた、私の学校の生徒を襲ったわよね?」
「さて、どうだろな?」
シラを切る彼の態度に、ルチアは苛立ちを覚えた。
鎌を握る左手に、力が込もる。
彼女にとって、その態度がどれほど許せないものなのか、言葉で説明することもできない。
「‥‥‥いいわ。 どちらにしても、私はあなたを倒さなきゃいけない」
そう言うとルチアは、鎌を引きずるようにもって構える。
重心を前に落とし、ダンッ!!と音を立てて走る。
一瞬にして狼使いの懐に飛び込むと、そのまま鎌を上に向けて振り上げる。
「はぁっ!!!」
気合一閃、刃は半月を描くように振り上げられる。
その一閃は先ほどの狼のように、切り裂かれる――――――はずだった。
ガシッッ!!
「ッ!?」
だが、刃の流れは途中で止まった。
そしてルチアは、その光景に目を疑った。
狼使いの右手が、ルチアの鎌を握っている。
ただの素手じゃない。
異能の力を纏った手だった。
その姿に、ルチアは驚く。
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