第一章 日常と非日常
第二話
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。 私は、それが許せない」
「お前‥‥‥」
ルチアが立ち向かう理由、それは傷つく人がいるから。
自分の知らない誰かが傷ついて、苦しんでいるのを見ているだけなのが嫌だったから。
そして、消えて欲しくないから。
その想いが、彼女を前に進ませていた。
「あなたは別に逃げても構わない。 逃げても、あなたを責める人なんていないから‥‥‥」
そう言うと彼女は、こちらに向かって威嚇する狼に向かって走り出した。
翔の手を、振り払って。
「待てッ!!」
翔は必死に手を伸ばす。
だが、その手をルチアは握り返そうとしない。
そのまま翔からルチアは遠ざかっていく。
そして翔はただ一人、逃げずに立ち向かう少女の勇姿を眺めていることしかできなかった。
***
駆け出した少女は、先ほどの少年‥‥‥相良翔の言葉を思い返していた。
無茶だ‥‥‥確かに、今の自分がしていることは無茶・無謀なんて言葉がお似合いだ。
普通だったら逃げるべきだ。
助けを呼べばいい。
‥‥‥だけど、逃げる気なんてなかった。
逃げるなんてことは、絶対にしたくなかった。
なぜなら彼女は、守りたい日々があるから。
たった一人で過ごす学生生活だけど、クラスメイトの名前は全員知っている。
もちろん、全学年の生徒一人一人の顔と名前も、しっかり覚えている。
それでも接していないのは、単にきっかけが掴めないだけ。
別にみんなから距離を置いているわけでも、嫌っているわけでもない。
むしろ、みんなのことが大好きだ。
個性的で、優しくて、笑顔でいるあの学校のみんなが大好きだ。
その中の誰かが傷つけられた。
それを知って、何もしないわけにはいかない。
「だって私は‥‥‥私は――――――ッ!!」
ルチアは狼に近づくと、足を止め、全神経を集中させる。
胸の奥に存在する、人間が持たない‥‥‥異能の力を――――――発現させるために。
「私は――――――“魔法使い”だからッ!!!」
天に向かって叫んだ。
その声を高らかに、はっきりと出す。
すると、彼女の全身を闇が包み込む。
まるで竜巻を生み出すかのように、闇が彼女に集結していく。
――――――闇が消えると、ルチアの服装が変わる。
一枚の黒い羽衣が彼女の全身をウェディングドレスのように包み込み、キメの細かい肌が月明かりに照らされて神秘的な姿を見せる。
そしてその美しさとは対照的に、左手には自身の身長の倍近くある長さの黒き鎌があった。
死神を連想させるその鋭く鋭利な鎌は、
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