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魔法使いの知らないソラ
第一章 日常と非日常
第二話
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ンッ!ドクンッ!

はっきりと聞こえる、心臓の鼓動。

緊張感、不安感、恐怖感、それらが相まって心臓の鼓動はいつもの倍以上に速い。

その感覚はきっと今、家に帰っても消えることはないだろう。

つまり、翔がしなければいけないことはただ一つ。

――――――この音の真相を、明らかにすること。


「‥‥‥行くか!」


自分自身に呆れるかのように苦笑いすると、翔はその脚を今までよりも力強くして駆け出す。

この胸騒ぎが、何かの間違いであることを願いながら、真冬の夜の世界を走る。



                  ***



 ギィィィンッ!!ギィィィンッ!!

最初に聞いた金属が擦れるかのような音が、連続して、さらに大きな音量で聞こえてくる。

工場や工業学校が金属を使って何かをしているのであれば納得が行く。

だが、この町にはそんなものは一つもない。

工事作業にしては、五月蝿すぎる。

この胸騒ぎの理由の一つなのだろう。

だが、それを超える程の不安があった。

それは‥‥‥何かを失ってしまうのではないかと言う、そんな不安。

まるで余命わずかの大切な人が側にいるかのような不安。

心臓の鼓動は抑制されることを知らないかのように、さらに激しくなる。


「はぁっ、はぁ、はぁ‥‥‥」


走り出してから約5分‥‥‥辿りついたのは、真夜中の廃墟地だった。

古びて崩壊寸前のマンションがたくさんあり、そこに人一人いるはずはなかった。

灯火町からも少し離れていたため、恐らくここは跡地か何かなのだろう。


「‥‥‥ッ!?」


辺りを見回すと、奥から黒い人影が現れる。

月明かりだけが頼りのこの場所で、その存在を目視するのに苦労した。

こちらに向かってゆっくりと歩いてきているのがわかる。


「ッ‥‥‥ぁ‥‥‥」


その時、翔は全身が動かないことに気がついた。

まるで金縛りにあったかのように、全身が指先すらも動かせない。

蛇に睨まれた蛙のようなものだろう。

呼吸すらもままならない。

なぜかはわからない。

とにかく、今の無防備な状態ではあの人影が危険な人物だった時に対応できない。

逃げることも、戦うことも、交渉することも‥‥‥何もできない。

まさに絶体絶命と言えるだろう。

‥‥‥そして人影は月明かりに照らされ、徐々にその姿を明らかにさせる。


「―――あなた、ここで何してるの?」

「ッ!?」


声が聞こえたと同時に、その人影もはっきりとした姿を見せた。

 黒く腰まで垂れ、夜風に靡かせた髪。

 黒一色で冬用のカシミヤコートとデニムを
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