第一章 日常と非日常
第一話
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<AM06:30>
―――ピピピッ!!ピピピッ!!!
「ん‥‥‥っ」
ベットの脇に置いてある黒いスマートフォンから、聞き覚えのあるアラーム音が聞こえる。
この音が聞こえたということは、目覚めのときなのだろうと気づいて意識を覚醒させていく。
「‥‥‥ふぁぁぁ〜」
季節は冬。
朝は氷点下近くまで気温が下がるため、三重にも重ねた毛布の温もりから離れるのはとても名残惜しい。
冬の布団は魔性のアイテムとも言え、少し油断すれば再び夢の世界に墜ちる。
「ぅ‥‥‥ぁ」
喉の奥から鈍い声を出しながら、温もりから離れる。
白のジャージを着ているが、寒さの前では無力にも感じる。
「っ‥‥‥」
そして彼はジャージを脱ぎ、ダンボールを一つ開けると、中から出てきた学生服を手に持って着替える。
黒をベースにしたブレザー、白と黒の細かいストライプ柄のズボン、そして赤一色のネクタイを首に巻いて結ぶと、彼はスマートフォンのカメラ機能を使って自分の服装がちゃんとしているかを確認する。
ネクタイはしっかり結べているのか、ボタンは締め忘れていないのかなど、細かい部分まで確認する。
冬にも関わらず、不慣れに制服を着ているのは、彼がこの制服を着るのはこの日が初めてだからだ。
そう。彼――――――相良翔はこの日、この町にある高校『私立灯火高等学校』‥‥‥通称『|灯高』に転校生として入学することになる。
理由は後々語るとして、主には家庭の事情と言うのが多い。
そのこともあり、一人暮らしでこの町にやってきて、これからは一人で生活していくことになった。
月に一度、仕送りは送られてくるが、それだけでは心もとないので近いうちにアルバイトをと計画もしている。
「さて、行くか‥‥‥」
説明をしている間に彼は着替えを終え、新品の鞄を手にして玄関に向かう。
「‥‥‥行ってきます」
誰かにいう訳ではない。
だが今までの癖みたいなものがあったため、つい言ってしまった。
まぁ別に悪いことではないだろうかと思った翔は、このことを保留にして家を出て、鍵をかけたのだった――――――。
***
「寒‥‥‥」
翔が歩いているのは、通学路となっている長い一本道。
横幅20m。一本道の距離1kmにも及ぶ長く広い一本道を歩く。
冬の冷たさのせいで地面は軽く凍結しており、油断すれば滑って怪我をするだろう。
この長い一本道は、別の高校の学生たちも利用しており、途中にあるいくつもの分かれ道を通ることで各々の学校に向かうことができる。
相良翔の向か
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