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魔法使いの知らないソラ
第一章 日常と非日常
第一話
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一人で解決させてきたからだ。

しかもそれを後輩に助けられるとは、思ってもみなかった。


「‥‥‥」


静香は右手で左胸を抑える。

なぜなら、緊張しているかのように心臓の鼓動が早いからだ。

胸が高鳴る、とでも言うのだろうか?

この表現のできない感覚が、最後まで残り続けるのだった――――――。



                  ***



不良とのいざこざを手短に解決させて、翔は再び紗智と共に下校する。

歩くのは、登校の時に通ったあの長い道。


「さっきは驚いたよ」

「ああ。でも、あの光景を見たら流石に助けたいと思うだろ」

「そ、そうだけど‥‥‥実際に助けようとは、思わないかも」

「‥‥‥そう、だな」

「?」


不意に、翔の表情が沈む。

まるで過去の辛いことを思い出すかのように。


「‥‥‥でも、あの時に俺が行かなかったら、怪我をしていたのは先輩のほうだ。それに――――――」


翔は立ち止まり、夕焼け空を眺めて言った。


「――――――誰かが傷つくくらいなら、俺が傷ついたほうがずっとマシだ」

「‥‥‥」


それは、自己犠牲だ。

自己満足で、自己犠牲。

彼自身、それは自覚しているのだろう。

だけど、なぜだろう。

彼が言った言葉には、なぜか重みがあった。

ずっしりと、離れようのないほどの重みが‥‥‥。


「‥‥‥さて、俺はこっちの道だからこの辺で」

「うん。また明日」


そう言って二人は別れて各々帰っていく。


「‥‥‥」


だが紗智は、一人で背を向けて帰っていく翔の姿を‥‥‥ただじっと眺めていた。

この、頭から離れない思いをどう表現すればいいのか、紗智にはまったくわからなかった。

こんなにも、彼のことを心配になってしまう気持ちは‥‥‥一体なんなのだろうか。

それが今日の夜、紗智が悩むことだった――――――。






そしてその夜、相良翔は事件に巻き込まれることとなるのであった――――――。
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