第七章
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のだった。
「鳩が戻って来て」
「戻って来て」
「何かを持って帰ればそれでわかります」
「それでですか」
「そうです」
空を見つつ出された言葉だった。鳩が飛び去ったその空を。
「そしてその方角に舟を向けます。宜しいですね」
「わかりました。それでは」
「そのように」
人々はノアの言葉を信じることにした。ここでもノアを信じるのだった。
「行きましょう、ノアさん」
「その行く先に」
「はい。それではそれで」
これでまた決まった。彼等はまずは鳩を待った。そうして暫くして。鳩は恵みの葡萄の蔓を持って帰ってきた。ノアはその葡萄を見て皆に言った。
「陸地です」
「陸地ですか」
「はい。鳩は葡萄の蔓を持って帰ってきましたね」
「ええ、確かに」
「今こうして」
彼等は皆ノアのその言葉に頷いた。
「そこに陸があります。葡萄の蔓があった方に」
「そこにですか」
「はい、そうです」
ノアはまた答えた。
「あります。ではそこに行きましょう」
「ええ。ノアさんの言われることなら」
「是非共」
「すいません、最後の最後まで」
あくまでノアを信じる彼等の言葉を聞いてノア自身は。ここでもまた深い感慨に浸るのだった。しかしその感慨に何時までも浸る時間はなかった。
「では行きましょう」
「はい、陸に」
「我々の新しい場所へ」
「行きましょう」
こうして彼等は陸地に向かうのだった。彼等が向かうその場所への道もまたノアが導く。ノアを信じ皆それに従う。巨大な箱舟を導きながらノアは自分を信じてくれる人々の心を感じ取っていた。それは何よりも温かく美しいものであった。彼にとっては。
箱舟 完
2008・6・29
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