暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【上】
七十四 三竦み
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
のメスを手に宿した。
「敬意を表して、死なない程度に痛めつけてあげますよ」


笑顔で吐かれたカブトの毒舌を、綱手はハッと鼻で笑った。人差し指をくいっと動かす。挑発。

「やれるものならやってみな―――ぼうや」



















「綱手さま……ッ!!」
ナルの手を借りて綱手の許へ急いだシズネは周囲を見渡した。
一週間前大蛇丸と対峙した観光名所たる短冊城。寂然とした城跡は散々たる様を残し、人気が全く無い。

綱手の不在に狼狽えるシズネ。薬の効果か、未だ辛そうな彼女を城壁にもたれさせ、ナルもまた注意深く辺りを見渡す。
ふと目線を下げると、浅黒い染みが目に留まった。当初眼を凝らしていたナルは思い当ってハッと息を呑む。


それは血痕だった。
大蛇丸の攻撃から綱手を庇った、アマルの血。


壁にまで飛び散った痕は渇いたと言え、夥しい量だ。その時の情景が目に浮かび、ナルは唇を噛み締めた。
既に起こってしまった事を悔やんでも仕方がない。気持ちを切り替えるようにナルは頭をふるふると振った。
今は綱手の行方を捜すのが先決だ。

「…何処行ったんだってばよ?綱手のばあちゃん…」
答えがないと解っていても問わずにはいられない。思わず呟いた独り言は意外にも返事があった。
それも崩壊した城の影から。

〈こっちだ、ナル!!〉
「へ…?あ!」
突然掛けられた声に目を瞬かせる。直後、ナルは顔を輝かせた。
「パックン!!」
〈全く…。このわしを置いてきぼりにしおって…〉


むすっとした顔で文句を言う畑カカシの忍犬――パックン。
志村ダンゾウが五代目火影に就任しそうだという緊急報告を伝達しに来たパックンはナルと同じ宿で寝泊まりしていた。
だが今朝はナルが何度呼び掛けても眼を覚まさなかったので、仕方なく単身病院へ向かったのである。

「だって全然起きなかったんだって。オレってば、何回も声かけたってばよ?」
〈う…それはすまん。何故か物凄い睡魔に襲われてな…〉
ナルの言い分を聞いて、罰が悪そうにパックンが頭を掻く。パックン自身も眼を覚ますとナルや自来也がいなかったので戸惑ったのだ。ナルの匂いを辿り、今ようやく追いついたところなのである。


「…とにかく、綱手さまを…っ」
場違いなほど呑気な会話に、焦れたシズネが口を挟む。
彼女の必死な形相を見たパックンは一瞬怯んでから素直に頷いた。くん、と鼻を動かす。
〈自来也の匂い…それと大蛇丸の匂いもするな。どうやら移動したようだ〉


間を取って闘うには此処は狭いと判断したのだろう。城跡から幾分か離れた場所から数人の匂いを嗅ぎ取って、パックンは駆け出した。パックンの先導でシズネも走り出す。


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ