第十一話 ポテンシャル
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とら、キッチリデータとって攻め方練ってきてんだよ。……あっちは真っ向勝負、こっちは弱点をチョコチョコ付くなんて、まるでどっちが格上なのかわかんねぇな)
リードする大友はマスクの奥で苦笑した。
<2番、セカンド良君>
「チッ、アホみてーにブンブン振って帰ってきやがって。だからアイツの1番には反対なんだ。」
あっさり三振に倒れた哲也に毒づきながら左打席に入るのは、これまた2年生の良銀太。オレンジの髪、メガネをかけ、顔つきがどうにも侮れない雰囲気を醸し出している。
(帝東は、俺ら相手に大会初登板のエースを持ってきた。ここまで温存されてきたって事だが、案外ピッチャーってのは、投げてないってのも不安に感じたりするもんだ。合田のバカが調子乗せたかも知れねーが、もう一度早めに打って崩す。)
バットを持つ両手を少し離し、バットを揺らす天秤打法で銀太はボールを待つ。
相手投手の球は、高めのストレート。
銀太はバットを思い切り、上から被せた。
打球は三遊間の真ん中をゴロになって破っていった。
(これまでの試合じゃ、低めの球を拾うようなスイングしてたのに、今はボールに合わせて咄嗟にスイング変えてきた。こいつ、良いバッターだな。)
捕手のポジションで大友はため息をつく。
ワンアウトから、銀太がヒットで出塁した。
「よしよし、さすが銀太だ。ちゃんと僕の前にランナーとして出てくれた。」
銀太のナイスバッティングに、知ったげに頷きながら打席に入るのは、スタメンの中で数少ない3年生、主将(一応)の礼二。
チームの精神的支柱の3年生に期待がかかる、、、というのは普通のチームの話で、このサボリ魔インチキ主将の場合にはそんな事はない。
「ストライク!」
「ストライク!」
「ストライクアウト!」
(……何?)
三振に切ってとった当人である帝東バッテリーも、キョトンとしていた。バッターの礼二は、特段何を思うようでもなく、ベンチにスタスタと歩いて帰っていく。
礼二は一度たりともバットを振らなかった。
見逃し三振である。
(……確かにデータでは、外の球には一切手を出してこないとあったけど、アウトローのストレート三つ全く打つ気もなく見逃すとは……)
キャッチャーの大友も、半ば呆れたような顔をしている。敵とはいえ、あまりのちゃらんぽらんぶりに、むしろ心配になるレベルであった。
「なぁーんで振らないんだよ!振らなきゃ当たんねぇだろーが!やる気あんのかよ!何仕方がねぇって顔で帰ってきてんだよ!」
ベンチに帰ってきた礼二に、権城が烈火の如く怒る。当然である。自分を差し置いて試合に出ているインチキ野郎がこんな無気力プレイを晒していて、黙っていられる訳が無い。
「だって、仕方がないじゃないか。僕に
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