第五章
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。御前の家族と動物のつがいだけを救えとな」
「確かに」
「我は間違いを犯さぬ」
このことも言ってきた。
「このことは確かに伝えておいたな」
「その通りです」
このこともまた認めたノアであった。
「確かに仰いました。神よ、貴方は」
「では何故だ」
ノアに問うてきた。
「何故我の言葉を破ったのだ」
「全ての者をこの舟に入れたことですね」
「御前の家族以外は神に背いていた」
神は言う。
「そして動物もまた。つがい以外はいらなかった。それをどうしてだ」
「私は思ったのです」
ノアはその厳かな、雷の如き言葉に身体が震えてたまらなかった。しかしそれでもであった。必死に心を震わせて神に対して答えるのであった。
「誰もが正しい心を持っておられます」
「そう思ったのだな」
「そうです」
またはっきりと述べてみせた。
「私は。そう思いました」
「それで皆を助けたのか」
「そうです」
またしても答えた。毅然として。
「助けました。そのことを認めます」
「ではまた聞こう」
神は答えなかった。そのかわりまたノアに問うてきた。
「何でしょうか」
「御前は動物達も全て舟に入れたな」
「その通りです」
この問いにも答えるノアだった。
「今この舟の中にいます。皆」
「つがいだけと命じた筈」
神は問う。
「それでどうしてだ。何故皆入れたのだ」
「動物にもまた心があるからです」
「心があると申すか」
「そうです」
ノアはまたしても毅然として答えたのだった。
「動物達にも心があります。その証拠に」
「証拠に?」
「私が舟を建る時に彼等は助けてくれました」
「御前をか」
「その通りです。そしてそれは」
ノアはさらに言う。
「人も同じです。私の家族以外の人々もまた」
「御前を手伝ったというのか」
「訳も何も言わず」
このことを正直に神に告げたのだった。
「私を手伝ってくれました」
「だから皆を入れたか」
「最初に。そう決めはしました」
「最初にだと」
「はい、そうです」
それもまた認めるノアであった。
「皆を救おうと舟を建っていきました」
「それを皆が手伝ったか」
「私の為に」
ノアはまた事実を神に告げた。
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