第四章
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、それをね」
それを言ってはどうかと。夫に言ったのである。
「どう?もう」
「そうだな」
ノアは素直に妻の言葉を受けて頷いた。
「いいな。確かに」
「ええ。最初から決めていたことだし」
「そうだ。それにだ」
ノアの声が強いものになった。
「この人達なら」
「ええ、そうね」
今度は妻がノアの言葉に頷いていた。
「大丈夫だから。何があっても」
「そうだな。よし」
ノアは意を決した顔になった。そのうえで皆に声をかけてきた。
「皆さん、宜しいでしょうか」
「んっ、何だ」
「どうしたのですかな、ノアさん」
「お話したいことがあります」
まずはこう前置きしてきた。
「お話したいこととは」
「一体。何でしょうか」
「この舟のことです」
ここで一旦。舟を見た。途方もなく巨大なその舟を。この世の全てが入ってしまいそうなその舟を見て。彼は語り続けるのであった。
「この舟の」
「そうです。実はですね」
一呼吸置く。言葉を真剣に選んでいた。
「間も無く洪水が起こります」
「洪水!?まさか」
誰かが今のノアの言葉を否定した。
「そんな筈が。それどころか今は雨が少ないのに」
「いや、待て」
だが今の言葉は。別の者にすぐに否定された。その根拠は。
「ノアさんの言葉だぞ」
「ノアさんの」
「そうだ、ノアさんは嘘は言わない」
その男は強い声で言うのだった。
「違うか、それは」
「確かに」
そしてこの言葉はすぐに受け入れられた。
「ノアさんだな。だったら」
「そうだ、今の言葉は嘘じゃない、本当だ」
「本当なのか」
ノアの持っている徳と信頼が表われた流れであった。誰もがノアを心より信頼していたからこそ信じられたのであった。全てはノア自身の為したことであった。
「それでノアさん」
「はい」
自然とノアへの問いになっていた。
「その洪水はどうして起こるのですか」
「神です」
ノアは神を出してきた。
「神!?」
「そう、神が起こされる洪水なのです」
彼は遂にこのことを皆に対して告げたのだった。禁じられていたことをしたのだった。
「神がですか」
「わしは皆の為にこの舟を完成させたかったのです」
「なっ・・・・・・」
これを聞いて。誰もが絶句した。
「わし等の為に」
「何と・・・・・・」
「皆さん」
ノアはあらためて一同に声をかける。
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