暁 〜小説投稿サイト〜
港町のポークル日記
ゆゆゆの日課
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おじさんに、きょとんとしたゆゆゆは片手を自分の首にあてます。
「違う違う。そりゃチョーカーだ。・・・うーんとな。魚釣りでどれだけ釣れたかーっていうのを、釣果っていうんだ。」
「へぇー。ちょうか!ですね。」
「そうだそうだ。」
おじさんは満足げに笑うと、ゆゆゆの頭をぽんぽんと軽く叩きました。
「えへへ。じゃあおじさん。今日の釣果はどうですかー?」
また桟橋から水面を覗き込んで、おじさんに聞きます。
「うーん。今日はイカが1杯と、魚が2尾。今夜のうちの夕食分ぐらいはなんとかなりそうだなあ。」
「おー。いつもより大漁ですね。」
網の中を静かに泳ぐ魚が見えた。
「おう。そういや、今日も一尾入ってたぜ。」
「まあ。それは急がないといけません。」
「おう。がんばってな!」
立ち上がったゆゆゆは、おじさんに会釈すると、いくつかのびてる桟橋のひとつに向かいました。

ゆゆゆの向かう桟橋の先には、小型の箱が据え付けられていました。
何人かの釣り人と挨拶を交わしながら、箱の前に立つと、ゆゆゆは箱を開きました。
箱の中には、大ぶりの葉で包まれた何かが置かれていました。
箱をあけた途端、箱からいやな臭いが鼻をつきました。
生ゴミのような何かが腐った臭いがします。
ゆゆゆは、ちょっと眉をよせながら、葉で包まれたそれを丁寧に取り出しました。
そして、それを足元の小さな板に載せます。
次に、箱の横にある桶を取り、海水をくみ上げ、桶に、葉で包まれたものを入れました。
ゆゆゆは、ポシェットから、先ほどもらった小さなメダルと、小袋を取り出し、メダルを桶に沈めます。
「うん。準備完了です。」
そう言うと、ゆゆゆは立ち上がり、なにやら唱えはじめました。
「お、はじまるか?」
近くに陣取っていた釣り人が興味深げにゆゆゆの方に目を向けて言いました。
いつの間にか、近くの釣り人の多くが、ゆゆゆに目を向けていました。
ゆゆゆの囁きのような唱えと共に、ゆゆゆの体に、青いような、紫のような光が立ちのぼりました。
ゆゆゆは、両の手を前方の桶の上にかざし、両手で何かを包み込みます。
それはゆゆゆの唱える魔法でした。
「ささやき いのり えいしょう ねんじろ」
それは、神に仕える聖職者が扱う、白魔法でした。
死者をも蘇らせる、奇跡の技です。
誰でも使えるわけではなく、力のある聖職者が鍛錬を積んで身に着けるものでした。
ゆゆゆの紡ぐ最後の言葉と共に、ゆゆゆが開いた手のひらから、白い羽のような輝きがふわりと落ちます。
その光る羽根は、水に沈む葉の中に吸い込まれていきます。
わずかに間をおいて、ぱちゃん。
水がはねる音が桶から響きました。
汗を額に浮かべたゆゆゆが、桶を覗き込むと、桶の中を一匹の魚が泳いでいました。
「わぁ。成功です!」

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