第一章
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上の親友なのだ。ノアは彼等が悪人とはとても思っていないのだ。
「わし等を守って下さる王様や兵隊さんもな」
「私達以外の全ての人が」
「滅ぼされる。神によってな」
神、絶対の言葉が出た。
「それはいいのか。あの人達は神を敬っていないか?」
「いいえ」
妻はすぐにその言葉に対して首を横に振った。彼女の目からは全くそうは見えなかった。これはあくまで彼女の主観であってもだ。
「皆それぞれ神を敬っているわ。これは本当よ」
「そうだよな。それはな」
ノアは妻の今の言葉にこくりと頷いた。彼から見てもそうとしか見えない。妻の言葉でそれが間違っていないことを確認することになった。
「確かなことだな。それに」
「それに?」
「わし等だけ助かっていいのか」
彼が次に問題としたのはこのことだった。
「わし等が神を正しく敬っているというだけでわし等だけ助かっていいのだろうか」
「それは」
「わしは。よくないと思う」
ノアは言った。
「わし等だけ助かっては。ならない」
「皆助かるべきね」
「そうだ。セムもハムもヤペテも」
ノアの息子達だ。三人共結婚しそれぞれ妻をもうけている。三組の夫婦もまたノアの家族である。つまりノアの家は八人家族なのである。
「他の皆も助かるべきだ。洪水の前に」
「けれど神は」
「そうだ」
沈痛な声で述べた。
「それもある。しかしわしは」
「私も」
ノアと妻の言葉が完全に重なり合った。その心も。
「皆を見捨てて私達だけで助かることはできないわ」
「そうだ。それに」
ノアはさらに言葉を続けた。
「動物達もつがいだけだ」
「動物達も」
「その他の動物達も滅ぼすと申されている」
「そんな、人が神を敬っているかどうかさえわからないというのに」
これは妻から見た目である。しかし神から見ればそうではない。神の目は絶対なのだ。絶対であるからこそが神なのだからだ。
「動物達まで。人とは何の関係もないというのに」
「動物に心はないというのだ」
ノアは神の言った言葉をそのまま妻に告げた。俯きつつ。
「だからつがいだけ残して滅ぼしてもいいと仰るのだ」
「つがいだけを舟に乗せるのね」
「洪水により滅ぼし」
ノアはこのことも言う。
「わし等だけが残るのだ。正しい心を持つわし等だけが」
「それは違うわ」
妻はノアの言葉にまた首を横に振った。
「決して。違うわ」
「そうだな。違う」
ノアの声が変わった。表情はそのままだが強い声になって妻の言葉に頷くのだった。
「わし等だけ助かっていいものじゃない」
「ええ、その通りよ」
「神は仰った。箱舟を作れと」
「箱舟ね」
「そうだ。それに乗り洪水を避けよと」
「じゃあその箱舟を作り変えましょう」
妻は言った。
「
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