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業は消えて
第二章
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と途方もない違いだった。派手な暮らしではない。しかしそれでもその生活に満足している自分にも気付いた。
 彼は表情も変わってきたことに気付いた。ある日部屋の風呂に入りそれに気付いたのだ。
「顔も変わったな」
 これも何時しかだった。組長時代は鋭く険しいものだった。しかし今は至って穏やかなものになっている。若者達に囲まれているうちに変わったのだ。
「こういう生活がいいのかもな」 
 そのうえでこうも思うのだった。
「案外な。このままな」
 そう思いながらさらに日々を過ごしていると気付けば寺の中に入っていた。これまで寺とか神社といえば御開帳での鉄火場かテキ屋の仕切りでしか来たことがない。今やって来た寺は至って静かなものであった。
 誰もいなかった。周りの木々のせせらぎもない。だが彼はその中で思うのであった。
「俺は今まで悪いことばかりやってきた」
 まずは己の過去を思った。
「そんな生き方だった。けれどこうした生き方もあるんだな」
 こう思いだしたのである。
「なら今はこうして生きるとするか」
 そう決意しそれから日々寺にも参るようになった。やがてこのことは住職も知り彼とも親しく話をするようにもなったのであった。
「左様ですか。過去はそうだったのですか」
「いや、悪事を重ねてきました」
 恥ずかしげに住職に語るのだった。寺の前で二人並んで座り茶を飲みながら。
「今思えば悪い業を積んできました」
「それは確かです」
 住職も業については否定しなかった。
「貴方はそれだけ悪いことをしてきました」
「はい」
「しかしです」
 ところが住職はここで言うのであった。

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