第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第一節 旅立 第五話 (通算第25話)
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「シャア大佐……じゃない、シャア准将が《ジオング》で出撃されて、識別信号が途絶えた時は、我が目を疑いましたがね」
「大佐でよい」
シャアにとっても准将という位は馴染まないものだったのだ。だが、元ジオン公国軍人であり共和国軍人である二人にとって、それは違う。二人にとって准将では低すぎるのだ。
「いっそのこと、共和国軍全体の指揮を執っていただきたいものです」
「アポリー、口が過ぎるぞ。ですが、シャア准将、アポリーも私も呼んでいただけたことが嬉しいのです」
アポリーの率直さはシャアにとって嬉しいものだった。懐かしい戦友でもある。二人が両脇を固めてくれれば、戦いは楽なものになるだろう。
「二人には先に言っておくが、我が戦隊は全地球圏連合宇宙防衛軍への派兵が決まっている――が、私は着任することができない」
アポリーとロベルトが顔を見合わせた。司令官が着任しない戦隊など烏合の衆に過ぎない。比較的平和が続いている近年ではあったが、ティターンズの台頭できな臭さが漂い始めている。ティターンズが月の非武装中立を何処まで守るのか甚だ疑問であった。
「シャア准将の着任について、連邦軍統帥本部から、横槍が入ったのです」
キグナンが口を開かぬシャアの代わりに二人に告げた。
「それは……」
「連邦が《赤い彗星》を嫌がったってことか……」
キグナンが大きく頷く。アポリーはあからさまに怒りを露にし、ロベルトは腕を組んで考え始める。
「そこで、私は、中隊長として赴任することにした。明日の式典に君たちの直接の上司であるクワトロ・バジーナ大尉は欠席することになるが、よろしく頼む」
ソファーからシャアが立ち上がる。アポリーとロベルトは、敬礼を返した。
エゥーゴへの派兵はエゥーゴ結成以後、つねに第一機動艦隊第一戦隊と第二戦隊が着任する決まりになっていた。今年は第一戦隊の番であり、共和国政府としては、シャアを派遣することでスペースノイドの平和をジオン共和国が守る意志を強く打ち出せると踏んでいた。
だが、その思惑を地球連邦政府は快く思わなかったのである。ジオン共和国政府より、派遣兵員名簿が提出されると、即座に変更要請を打診してきた。ジオン・ダイクンの子であるという噂が存在する以上、地球連邦政府としてはエゥーゴへの派遣を取りやめてもらいたいという真意が明らかだった。
式典会場前には、凱旋したジオンの英雄をみようと大勢の国民が集まっていた。この式典はシャアだけの式典という訳ではない。毎年エゥーゴ派兵の際に必ず行われる派兵式典である。特に盛大に行われる筈ではなかったが、シャアが第一機動戦隊司令官に就任して初めての式典であり、警備にあたるのが、シャア直属の《赤》の部隊であると既に発表されていたからだろうか、まるでシャアのために開かれるかの様なマスメディアの熱
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