第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第一節 旅立 第五話 (通算第25話)
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
狂振りであった。
「それでは、共和国国防委員長ホイットマン氏より、新人事をご発表いただきます」
小太りだが太り過ぎてはいないホイットマンがはち切れんばかりの笑顔で壇上に立った。眼前にいるのは彼の支持者たちなのだろう。ホイットマンの名前をコールする声が会場に響く。
「それでは、紹介いたしましょう。栄えあるジオン共和国軍第一機動艦隊司令官、《勇猛なる虎》アレイン・スタニホフ中将」
アレイン・スタニホフ中将が席を立ち、一礼をホイットマンにし、来賓席にも一礼した。ホイットマンのごり押し人事の司令官就任であると、キグナンから聞かされていた。昨日、アポリーたちとの面会が遅れたのも、実はホイットマンがスタニホフをシャアに紹介しようと一席設けていたからだ。
スタニホフ自身を嫌いではなかったが、ギレン派の軍人でありながら、本土防衛に残された艦隊司令官であり、その能力には疑問があった。
「つづいて第一機動戦隊司令官シャア・アズナブル准将」
シャアが立ち上がり、民衆に一礼し、手を振った。その瞬間、会場全体が歓喜の声に包まれた。熱気を帯びる群衆たち。クラッカーや紙吹雪、リボンロールが飛び交った。ホイットマンの人事紹介を無視して会場外からはシャア!シャア!シャア!という呼び声が広がっていった。その声を聞きながら、シャアはホイットマンと貴賓席に一礼し、着席した。司会が懸命に民衆を落ち着かせようと声を張り上げた。
喧噪の中、興奮した群衆が会場に乱入するなど、予定外のパプニングの連続である。会場は混乱を極めたが、幸いにけが人を一人も出すことなく、事態は収拾された。アポリーとロベルトが、モビルスーツの信号弾を打ち上げたのだ。
コロニーの空に閃光が走る。そこに、グライダーが色付きの発煙筒で文字を書く。――シャア准将、ご帰還おめでとう!
シャアは安っぽい演出にホイットマンの底の浅さを見た気がしたが、敢えてそこに乗ることにした。民衆を落ち着かせるために再度立ち、静かになるのを待つ。シャアの姿を観た民衆は、《ガルバルディ》の威圧もあり、落ち着きを取り戻していった。
これで、シャアは自由に一個戦隊を動かすことができる立場に立った。
「望むと、望まざるとに関わらず……な」
来賓の挨拶が続く中、シャアはそう呟いた。
眼下に広がる公園にシャア直属の赤い《ガルバルディ》が立っている。群衆が歓声を挙げるなか、式典は終了し、シャアは舞台を降りた。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ