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機動戦士ガンダム0087/ティターンズロア
第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第一節 旅立 第三話 (通算第23話)
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がいる奴は国に帰るんだよ!」
 全員が、シーマに付くことになった。レコアも気持ちとしてはシーマに付いていきたかった。だが、シーマはそれを赦さなかった。
「レコア、アンタは来ちゃいけないよ。両親がいるんだろう、帰っておあげ……。そりゃ、アンタがいなくなっちゃこの荒くれ共の中に女はたった一人になっちまうがねぇ……」
 普段の兵を率いている時の相貌とは違う、優しくそして家族に向ける様な笑顔を向けながら、寂しそうに言ったのだ。
「シーマ姉さま……」
 レコアは、シーマに憧れていた。
 力強く、そして何処までも女でありながら、男たちを従わせる風格。自分にはないものを沢山持っていたからだ。涙を浮かべたレコアを、シーマが胸で抱きとめた。
「生きていたら、また逢おう。グラナダはいい街だったからねぇ……」
 そう言って、旗艦ザンジバル級機動巡洋艦《リリーマルレーン》に消えた。
 横を見るとクワトロ・バジーナが眠っている。
 だが、レコアにとって、クワトロはクワトロ・バジーナではない。シャア・アズナブル以外何者でもなかった。ジオン公国の輝けるエースパイロット《赤い彗星》のシャア。戦後流れた噂では、ザビ家の復讐のためにジオン公国軍に入ったとのことだったが、レコアがみたシャアは親しくガルマと談笑する祝賀パーティーの席上だった。
(この人が赤い彗星のシャア……)
 憧れていた英雄が自分の傍らで眠っている。そのことが、レコアの気を晴らした。生きていることを実感できたからだ。
(私の選択は間違っていない。主義者とかそうじゃないとか、そういうことでエゥーゴに参加した訳じゃないんだから……)
 父母は既に亡くなっている。戦争で荒んだ娘に何を思いながら死んでいったのだろうか。父母の介護と戦争に蝕まれた心との疲れで、レコアは押しつぶされそうになった時、父母は唐突に亡くなった。
 自由になった時、レコアは自分が犯した一年戦争での罪を贖って死のうとした。だが、できなかった。自分で望んだ訳ではないにせよ、人を殺しておいて、自分は生きたいなどと言っていいとは思えなかった。
 何ができるとは言えない、しかし、何かを為さねば自分を赦せなかった。
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