第一部 刻の鼓動
第二章 クワトロ・バジーナ
第一節 旅立 第一話 (通算第21話)
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た。
「期待しますよ……准将」
ひとりごちるキグナンだけが部屋に残された。
シャアの向かう先はベイエリアである。キグナンも足早に落ち合った部屋を立ち去る。アブ・ダビアにツナギをとらなければならない。ここから反対側のベイエリアにシャアが着くまで一時間はなかった。
シャアはかねてよりの計画を決行すると決めた。
今、シャアが属するのはジオン共和国である。父、ジオン・ズム・ダイクンの名を継いだ正統なる国。しかし、父は、サイド3〈ムンゾ〉だけの独立を望んでいた訳ではない。少なくともシャアはそう考えている。
一年戦争でジオンが得たものは大きい。ザビ家が地球を支配しようと考えなければ、戦争はもっと早期に終結していたであろうこともシャアには判っていた。だが、あの時は父の理想を具現化するよりも、復讐を成し遂げることしか考えられなかった。今でも、父の理想を継ぐことにためらいがある。だが、地球圏に戻って知ったティターンズの動きだけは許せるものではなかった。
(それに、七年も待ったのだ……全てが期待通りに動いてくれるとは思えんが、ティターンズの思う通りにだけはさせん!)
手を挙げてタクシーを拾うと素早く乗り込み、行き先を告げる。目的地は宇宙港のあるベイエリアだ。
タクシーの車窓から〈グラナダ〉の街並が流れる。放射状にメインストリートが六本。環状線が十二本走る東西十キロメートルに及ぶ巨大な複合都市である。一年戦争末期、ジオン公国の撤収によって、地球連邦軍が接収した月の裏側にある工業都市〈グラナダ〉。かつてジオン公国の兵廠としてモビルスーツの開発と生産をささえた重要拠点である。現在は、地球連邦軍グラナダ基地司令が行政監督官と連邦議会代議士を兼ねて総督として赴任している。経済的にはジオン共和国との連携が保たれたまま、月面都市経済連合の一翼をなしていた。月面都市経済連合は組織としてまとまっている訳でもなく、独立している訳ではないが、永世中立として地球連邦政府に非武装中立地帯としての特権を得ていた。〈グラナダ〉と〈フォン・ブラウン〉を除いては。ただし、月面都市経済連合とて一枚岩ではない。〈グラナダ〉はジオニック、〈アンマン〉はツィマッド、〈フォン・ブラウン〉はアナハイム・エレクトロニクスと、重工業系の大企業の植民都市化しており、相互に経済的に睨み合っている状態でもあった。
人口は二百万弱。総人口一億を超す月面恒久都市連合内では〈フォン・ブラウン〉に次ぐ大都市である。ここには各サイド自治政府軍から派遣された軍人で構成されている連合宇宙軍が駐留する月面基地もあり、シャアは連合宇宙軍に派遣されているジオン共和国軍の将校であった。
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