第九話 苛立ち、癒され
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いった。
「よーし行くぞ!」
権城によるノックが始まった。
佳杜に比べ加減が分かってない為か、中等科の軟式部員は権城の打球を最初は怖がった。ちょっと迷惑だったかもしれない。
ザサッ
バシッ!
しかし、1人だけその「加減が分かってないノック」に対応していたのは、さっきまでノックを打っていた佳杜だった。右に左によく動き、軟式特有の高いバウンドにも果敢にダッシュしてすくい上げる。二遊間からでも、華麗なスナップスローを決め、深いポジショニングを使いこなしていた。
「佳杜、やっぱ上手いなぁ」
権城のすぐそばで、キャッチャーをしている部員が呟いた。
「あいつだけは、硬式でもやれたのに」
そうだろうな。キャッチャーの呟きに、権城は心の中で返す。でもこいつは、行かなかったんだよ、硬式に。それは、お前らの事が捨てられなかったからじゃないか?
一通りノックが終わると、佳杜が権城に頭を下げてきた。
「ありがとうございました。久しぶりに、自分の守備練習も出来ました。」
少し泥に汚れた佳杜の顔は、先ほどよりもどこか、充実して見えた。悲愴感ではなく、生命力が溢れていた。それを見て、権城はニンマリする。
「お前、高校でも野球やれよ、絶対。俺待ってるからな。」
「いえ、それよりも。今はとにかく、この仲間とすごすこの夏ですね。」
相変わらず、可愛くない返しをされたものだが、権城は大して腹が立たなかった。
そうだ。お前、そういう奴なんだろうな、多分。
それで良いんだよ。
権城は何故か心の中がホッコリしていた。
メンバー発表からのモヤモヤなんて、飛んでしまっていた。
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