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Ball Driver
第九話 苛立ち、癒され
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った、化学部の仁地佳杜が、シートノックのノッカーを務めていた。しっかりユニフォームを着込んでいる辺り、真面目な性格が伺える。高等科の野球部は短パンジャージだらけなのに。

「……何の用ですか?」
「あぁ、君ら中等科の野球部だろ?姿や楊姉妹が居ないかと思って来たんだが……」

グランドを訪れた権城を見る佳杜の目は、前と同じように冷たい。そして、権城の言葉を聞いた瞬間、さらに冷たくなった。

「……新道君達は、区分はシニアリーグで、この学園の硬式野球部です。私達は、軟式ですので。」
「……あぁ……」

権城は予想外の答えに驚いた。
中学から、硬式と軟式が分かれているなんて聞いた事もない。

「去年から、新道君が硬式を作りました。今は、殆どの生徒が硬式で野球をします。私達軟式は、恐らく今年が最後になります。」
「…………」

どうせ高校から硬式になるんだから、硬式でやっとこう。ストイックな姿なら考えそうな事だ。そしてこの島ではカリスマ的な力を持つ姿が新しく部を作ったのだから、多くがそちらに流れるのも道理。その割を食って、軟式は人が減ってしまったという事らしい。

「……だから、ここに新道君は居ませんよ」
「…………」

権城からぷいと目を逸らして、佳杜はシートノックを再開した。殆ど野球するのにギリギリの人数の部員に、打球を飛ばす。権城は、それを受ける部員の下手さに驚いた。呆れるほどに下手くそだった。よく分かった。軟式に残ったこいつらは、姿が作った、恐らくガチな雰囲気だろう硬式に、「行きたくても行けなかった奴ら」なのだ。
ミソッカスなのだ。そしてそれを本人達も自覚している。小さくなって、背中を丸めて球を追いかけていた。

「中田君、もう少し、こうやって腰を落として。そうよ、そこから右足を前にステップするの」
「太田君、ショートバウンドには顎を引いて。そうしたら入るから」
「千葉さん、高く抜けるのはダメ。ワンバウンドで良いから、腕の届く範囲に。」

ノックを打つ佳杜は、そんな部員にいちいちアドバイスを送り、丹念にノックを打ち続けていた。
その姿には、どこか哀愁が漂っている。
無駄とは分かりつつ、やらずには居られない、そういう気持ちが透けて見えた。

「……」

権城は、ツカツカと佳杜に近づいた。
そして佳杜からバットを奪った。

「!!何を……」
「俺がノック打ってやるよ。だからお前も守れよ」

佳杜はきょとん、としたが、すぐに眼鏡の奥の目をキッと細めた。

「今日は権城さん、文化部の日では?」
「良いんだよそんなの。お前が気にする事じゃねえよ。さっさとグラブ持ってポジション行けよ。」

権城が撥ね付けると、少し躊躇いながら、佳杜が足下のグラブをはめてセカンドのポジションに駆けて
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