第十五話 白と黒の姉妹その十三
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「僕の足にあるのはね」
「フットワークは思った以上だったけれどな」
「僕の足は人間の足だよ」
「そうだよな」
「そのことに気付くなんてね」
「気付いたんだけれどな」
それでも、というのだ。
「止めにはいかなかったね」
「ここからさらにだね」
「連続攻撃が基本だからな」
薊の戦闘スタイルでは、だ。
「それに至れなかったのは残念だよ」
「生憎だったね」
「そうだね、しかももう一人いるね」
左の方を見てだ、薊はこうも言った。
「そうだね」
「そうだね、僕も今気付いたよ」
怪人は彼から見て右の方に顔をやった。薊と正対しているので彼からすれば右手になるのである。
「来たね」
「誰だよ、今度は」
「うむ」
こう言ってだ、出て来たのは。
今度は黒い身体をしていた、ぬめりとした感じでありやはりその手には水かきがある。顔は長い髭がある、それは。
「鯰かよ、今度は」
「如何にも」
その通りだとだ、黒い怪人も答えてきた。
「俺は鯰、デンキナマズだ」
「それかよ」
「そうだ、ではだ」
「二対一かい?」
「いや、それはない」
二人がかりで攻めることはしないというのだ。
「それは俺の流儀ではない」
「じゃああたしとこいつの勝負が終わってからかよ」
薊はピラニアの怪人を見つつ鯰の怪人に言った。
「あんたとの闘いは」
「それでいいか」
「いいさ、まずはこいつを倒してさ」
そして、というのだ。
「次にあんたを倒してやるよ」
「そのつもりか」
「ああ、そうするよ」
「出来ればな」
鯰の怪人は薊にこう返した。
「それが」
「つまりあたしがこいつにやられることもか」
「有り得るからな」
だからだというのだ。
「言っておくがそいつは強い」
「成程ね」
「ではそいつに勝てればだ」
「あんたとの勝負だね」
「そうなる」
「まあそれはないね」
ピラニアの怪人は二人の話が終わってから明るくだ、二人に言った。
「僕が勝つから」
「そうなるからか」
「君の出番はないよ」
鯰の怪人にこう言うのだった。
「悪いけれどね」
「では俺は他の少女を倒すことになるか」
「うん、そうなるよ」
「わかった、ではな」
鯰の怪人も納得した、こうして彼はとりあえず大気することになった。
筈だった、だがここでだった。
一台のバイクが来た、市街を普通に走っているオンロードのものだった。そのバイクに乗っているのは黒の制服の少女だった。
その少女を見てだ、裕香が目を顰めさせて言った。
「まさか」
「ああ、ひょっとしたらな」
薊もその裕香に応えて言う。
「あの娘かもな」
「そうよね」
バイクは戦場のすぐ傍で止まった、そして。
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