第七話:不思議な少女
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すると、城山の攻撃を受け止めるべく目の前で腕を交差させ、そこへ精神を集中した。 俺の両腕が城山のそれと同じように光……しかし城山のそれとは違う、黒い光を纏い始める。
「吹っ飛べっ!」
そう言って、青白く光る右腕を俺へと振り下ろす城山。 それはガンッと言う、金属同士がぶつかるような鈍い音を立てて俺へ直撃し……。
そして、何も起こらなかった。
「……何だと?」
流石のバカもこれには驚いたのか、目を見開いて驚愕の表情で俺を見下ろす。 とは言え驚いたのは俺も同じ事だ、俺はきょとんとした表情で目の前で棒立ちになっている城山へと声をかけた。
「何だ?あんたはこの学院でも魔術適性が高いグループだって聞いたけど、この程度かよ」
「……っ!なめんなよ、一年坊!」
そう言って城山はバカの一つ覚えのように拳を打ち下ろしたが、この程度ならガードを固める必要もない。 俺は黒いオーラを纏った掌を開いて城山の拳を真正面から受け止めると、そのまま奴の腕を掴み上げ、ひょいと軽い動作で近くの壁へ向けて投げ飛ばした。
「ぐ、げっ!?」
まるで野球ボールか何かのように空を飛び、壁へ激突して短い悲鳴を上げる筋肉ダルマ。 その光景に周囲の生徒達は言葉を失い、小望と京介だけが呆れた表情でため息をついていた。
「相変わらず、すげーバカ力だな……」
「もう、ろくに力の加減も出来ないのにケンカなんかやめてよ」
「昨日入学式で聞いただろ、『決闘じゃ腕折るまでならセーフだ』ってさ」
――まぁ、それでも気絶させるまでやるつもりはなかったけどな。
俺は壁にもたれるような恰好で気を失っている城山へと目をやったが、目立った外傷はない。 ほっとけばそのウチに起きるだろう。 俺は無言で『イデア写本』から意識を切り離すと、ぐるりと周囲を見渡した。
ギャラリーの学生達はしばらく俺を見ながらヒソヒソと話をしていたが、俺の視線に気付くなり気まずそうな顔で食堂内へ散って行った。 辺りに残ったのは初めからこの周辺にいた生徒数人を除けば、小望と京介、そしてすぐ傍らで棒立ちになってこちらを見つめている生徒……城山たちに絡まれていた少女だけだ。 俺は少女に近付くと、頬をかきながら少女に声をかけた。
「余計なお世話かもしんねーけど、大丈夫か?」
「十六夜、桜花」
「うん?そうだけど……あんたも災難だな、初日からあんな連中にからまれて」
短く俺の名を呼び、こちらへ目をやる少女。 長い黒髪が特徴的な、小柄な美少女だ。 制服のラインが赤だと言う事は俺と同じ一年生だろう。
「強い、な」
「まーな、それだから魔王なんて呼ばれてる」
妙に途切れ途切れの話し方
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