Episode28:出発と歯車
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受けているのだろう。
「経験、イコール年齢じゃねえってことだろ」
一度自分も服部と同じ思いをしたから、桐原には彼の気持ちがよく理解できた。だから、服部のボケたセリフにツッコミを入れることもなかった。
「……司波さんもか?」
戸惑うところに「信じたくない」という思いがあるのだろう。服部の声は揺れていた。対し桐原は、そんな心理が作用しなかったのか(春に彼女ができたことが大きく影響しているのだろう)、彼は友人の問いにあっさり答えた。
「妹の方は直接見たわけじゃねえけどよ。あの兄貴が、荒事の現場に連れて行ったんだ。ただの女の子のはずねえよ。今日のあの様子を見るてると、綺麗なバラには刺がある、どころか、鋭い爪と獰猛な嘴で毒蛇を喰らう孔雀ってとこじゃねえか?あんなのにちょっかい出そうなんて、随分と命知らずだと思うがね。まっ、無知は幸いなりってとこか?」
桐原の最後の部分は、服部ではなくバスの中で深雪に群がっていた男子生徒へ向けられたものであった。
「しかしあの服部の口から、あんなセリフが聞けようとはな」
落ち込んでいる時に、更に与えられた衝撃的な情報を齎されて混乱している服部に対して、桐原は人の悪い笑みを浮かべた。
「……何のことだ」
「魔法師の優劣は、魔法力だけで決まるものではない、か。そのセリフがお前の口から飛び出したって会長が聞いたら、大喜びするんじゃねえの?」
「っ!」
服部は、ニヤニヤと笑っている友人を鋭く睨んだが、真っ直ぐに桐原が自分の目に視線を向けてくるのを見て、顔を背けた。
「優劣はともかく、強い弱いは魔法力だけで決まるもんじゃねえよなぁ」
ニヤニヤと人の悪い笑みを向けてくる友人を無視して、服部はそのばを立ち去ることにした。が、桐原はその服部の態度に逆に楽しそうな笑みを浮かべた。
「ブルームだ、ウィードだなんて、
たかが入学前の実技試験の結果じゃねえか。一科の中にも、伸びる奴もいれば伸びない奴もいる。千代田なんて、才能だけに胡座かいてた去年の夏から比べれば別人だぜ。二科の連中だって、自分で諦めちまわなきゃ、強くなれる奴は一杯いるんじゃねえの? ……いや、将来性だけの話じょねえな。現に、二科生にだって『できる』奴は少なくない。今年の一年は特にな。おっと、別に、自分が司波兄に負けたから言うんじゃないぜ」
桐原の最後の言葉に、服部の肩がビクっと震えた。
(ああ、そう言えば、コイツもあの野郎に苦杯を嘗めさせられた口だったな)
「まっ、現時点では俺より奴の方が強い。それは認めるさ。だが、アイツがいくは詐欺みたいに強いからって、負けっ放しにしとくつもりは無しだ。腕を磨いて磨いて磨き抜いて、次に立ち合うときは勝ってやる。今、劣ってるからって、諦
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