Episode28:出発と歯車
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九十九とコミュニケーションを取ることも忘れていなかった。対して九十九も、誰よりも早く危険を察知して、尚且つあの場面で冷静に十文字会頭の魔法であるファランクスを以ってして突っ込んでくる車を止めてみせた」
「あん時は渡辺委員長も手出しできなかったんだぜ? 司波妹は冷却系が得意みたいだし、九十九だって十文字会頭と同様に防御系の魔法が得意だったって可能性もあるだろうし、魔法の向き、不向きの問題なんじゃね?」
ちなみに、桐原はブランシュのアジトに隼人が潜入し、戦闘を行っていたことを知らない。だから、彼は隼人の戦闘方法を知らないのだ。
「渡辺先輩の得意分野は対人戦闘に偏っているから、あの場面で手を出さないのはむしろ自制心の賜物だ。ああいう状況なら、俺の方ができることは多い。
……いや、魔法力だけの問題じゃない。渡辺先輩は、あの場面で自分が手を出すべきではないと瞬時に判断して、相克という最悪な事態の回避を優先した。それに、十文字会頭も九十九の次に事態を判断して、すぐにでも魔法を行使できる状態にあった。尚且つ、自分ではなく九十九が対処することを見抜いて、慌てて魔法を放ったりはしなかった。司波さんは、自分にできることを冷静に判断した上で、声に出すことで協調をとっていた。そして、九十九の誰よりも早かった危機の察知能力。
それは単に、魔法力が大きいとか小さいとか、多彩な魔法を使えるとか強力な魔法を使えるとか、そういう技能的な問題じゃなくて、魔法師として、魔法を使わなければならない場面で正しく魔法を使えるかどうかーーそう、魔法の資質ではなく、魔法師としての資質の問題だ。
確かに司波さんと九十九の魔法力は飛び抜けている。多分、単純な力比べでは、俺は彼らに勝てないだろう。だがその点については、さっきのことがあるまで、それほど気にしてはいなかった。魔法師としての優劣は魔法力の強さだけで決まるものではないからな。しかしーー魔法の資質だけでなく、魔法師としての資質まで、年下の、それも一人は女の子に負けたとあっては……自信を失わずにはいられんよ」
口に出すことで、更に消沈してしまった服部に、桐原はまるで手のかかる弟をあやす兄のような表情を浮かべた。
「あ〜、そういうのは場数だからなぁ。その点、あの兄妹と九十九は特別だと思うぜ。特に、九十九はな」
「兄妹? それになぜ九十九を強調する?」
桐原が評価したのは、深雪を指す彼女ではなく『兄妹』だったのと九十九を強調することが予想外だったのだろう。服部は桐原に怪訝な顔をして問い返した。
「兄貴と九十九は…多分ありゃ、殺ってるな」
「ヤってる?」
「ああ、実際に人を殺しているな。それも、一人や二人じゃない」
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