Episode28:出発と歯車
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そのため、彼の不調は一校チームの戦略に多大な損害をもたらす。そのことを、服部は客観的に理解していた。だが、さっきのアレを見せられてしまえば、気落ちしてしまうのも無理はないと、また客観的に認識していた。
「いったい何に落ち込んでるんだ?」
桐原の知る服部刑部という男は、たゆまぬ努力の果てに成った自信家だ。
森崎のように弱者を見下し過信するわけではなく、冷静に、自分の能力を客観的に理解し、他者より努力しているという自負があるからこその『自信家』なのだ。
ただ、森崎に似て少し傲慢な部分が少なからずあり、誤解されがちだが。
『努力』と『才能』と『実績』、この三つに裏付けされたものであれば、そう簡単に自信をなくすということはないはずだが。
「お前は感じなかったんだな。羨ましいよ…」
「なんだぁ? そりゃ、俺がバカだって言ってるのか?」
「いや? 鈍いとは思っているが」
「おい!」
少し、いつも通りの調子に戻ってきたようだ。服部の口元に浮かんだ皮肉っぽい笑みを見て、桐原は内心で溜息をついた。
「…似合わないぜ? いったい何をクヨクヨしてるんだよ?」
これまでも、桐原に何度か相談に乗ってもらったこともあったし、逆に服部が桐原の相談に乗ることもあった。
だから、桐原の不器用な気遣いに服部が気づかないはずがなかった。
観念したように、口を開く。
「さっきの事故の時……」
「あ〜、ありゃあ、危なかったな」
「そう、何もしなければ重症者が何人も出ただろう。死人が出たかもしれない」
「だが九十九を始めとして上手くやってくれたじゃねえか。現実にならなかった被害で悩むのは『たられば』の一種だぜ? ベクトルが逆向きでも、不健康なことに変わりはねえよ」
相変わらずの友人の発言に、服部は小さく笑った。
「お前のそういう割り切ったところは、本当に羨ましいよ、桐原。だが俺が考えていたのはそういうことじゃない」
そう言葉を切って、服部はまた小さく頭を振った。
「…あの時、俺は結局何もできなかった」
「そりゃ、あの状態で下手に手出ししたら、収拾がつかなくなっちまうおそれがあったからな。渡辺委員長が止めてくれたから良かったが、あそこで魔法を発動しようとした奴らはまだまだ未熟ってことだ。その分、お前はまともな判断力を残していたと思うぜ」
桐原の発した言葉は慰めであっても気休めではなかった。
客観的な状況分析による適切な指摘、服部も、それについては文句もなかった。
それでも、服部の表情は変わらず暗い。
「だが…司波さんと九十九は、正しく対処してみせた。司波さんは自分の得意な分野から分担すべきことをキチンと判断して、言葉を発して
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